感情センシング&ビジネスデザイン

人の”こころ”を測るセンシング手法の紹介と、それらのビジネス活用の可能性について考えます。

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巷の脳波計測デバイス(Interaxon社)

 

設計思想は目的特化!な脳波デバイス

個人的な印象としては、Emotiv社の次によく見る脳波デバイスであるMuseシリーズです。この会社(Interaxon社)の開発戦略は「この目的で使うものです」と用途が最初にあり、それに沿ってモノづくりをしているイメージと個人的には思っています。「作りました。使い方はあなたが考えてください」の旧態依然のスタイルではなく、課題を解決するものを作る、事業計画としてはまさにそうあるべき!を貫くスタイル。

そんなInteraxon社の提供する脳波計を、一部紹介します。

 

注意:本当に私の独断と偏見でコメントしております。間違いや「こいつわかってないなぁ」などありましたら、それはすみません!

 

 

Musehttps://choosemuse.com/muse-2/

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画像は”https://choosemuse.com/muse-2/”より引用

基本SPEC

◾️金額:$209.99 28,000〜¥30,000程度(日本代理店により料金差あり)

◾️電極数:7個(チャネル5個+リファレンス2個)

 →ただし、5個のチャネル(下記AF7〜AF8位置)が信号的に分離しているかは不明です。

◾️電極タイプ:ドライ

◾️駆動時間:〜5時間

◾️重さ:51g

◾️その他センサ:パルスオキシメーター・?軸加速度・?軸ジャイロ

◾️通信:BT4.2

◾️計測箇所: AF7, Fp1, Fpz, Fp2, AF8, Tp9, Tp10

◾️サンプリングレート:?(1世代前のMUSEは220Hzか500Hzの選択が可能)

◾️検出域:?

感想:扱いやすいTHE・ウェアラブル脳波計

脳波を使用した独自アプリを開発されている企業が、連携デバイスとしてよく選んで定いる印象があります。連携用のAPI等のソフト周りも含めて、開発側にとってもUI/UXが優れているデバイスってことですね。

脳波と合わせて、パルスオキシメーターによる心拍数の計測、加速度とジャイロ(何軸かが分からなかったのですがおそらく3軸なのでは?)で姿勢や呼吸数もわかる。

バイスは伸縮するバンド部分やクッション性のある額部分で、どんな頭の大きさの人でも使用できるようにしつつ、接触ずれを少なくする工夫が見られる。耳掛け部分の電極(メガネの”つる”部分のよう)がリファレンスになるのだけれど、この電極は金属ではなく導電性のゴムで、滑り止めにもなり装着性も良い。

Emotiv社とは異なり、同社はこのデバイスを瞑想用のデバイスとして最初から販売しており(Emotiv社は脳波計測用のデバイスとして販売)、生理指標の計測目的というよりは理想の瞑想状態に導くために必要なセンサー機器を製作したような印象(WEBにもあまり詳細スペックがないのはそのせいかな。。)。

個人的には、少し耐久性が気になる機構かなとは思う。額のクッション部分が特に脆いような印象は受ける。また、基本はEmotiv社のInsightと同様で、日常使いをするのには少し厳しいかな、、という印象。やっぱりベルト型はどれだけデザイン性を高めても、外で見かけたらギョッとする。元々この製品の目的は瞑想用で、家で一人で動かず、使用することを前提としているようなので、デザイン的にも機能的にも目的には合っているということだと思う。

 

 

脳活動計測デバイス Muse2 国内正規品 MU-03-GY-ML

脳活動計測デバイス Muse2 国内正規品 MU-03-GY-ML

  • 発売日: 2020/03/03
  • メディア: スポーツ用品
 

 

 

 

 

MUSE S (https://choosemuse.com/muse-s/

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画像は”https://choosemuse.com/muse-s/”より引用

基本SPEC

◾️金額:$299.99

◾️電極数:7個(チャネル5個+リファレンス2個)

 →ただし、5個のチャネル(下記AF7〜AF8位置)が信号的に分離しているかは不明です。

◾️電極タイプ:ドライ

◾️駆動時間:〜10時間

◾️重さ:41g

◾️その他センサ:パルスオキシメーター・?軸加速度・?軸ジャイロ

◾️通信:BT4.2

◾️計測箇所: AF7, Fp1, Fpz, Fp2, AF8, Tp9, Tp10

◾️サンプリングレート:?(1世代前のMUSEは220Hzか500Hzの選択が可能)

◾️検出域:?

感想:Muse 2 を睡眠特化させたデバイス

睡眠時の脳波計測による「快適な睡眠のサポート」は瞑想と並んで脳波デバイスの使用方法としてよく挙げられる方法だが、本デバイスはまさにそれ。フェルト型でストレッチもきくボディで、睡眠時の快適な装着を実現しているよう。連続駆動時間が〜10時間というのも睡眠時間に合わせて設計しているように思う。

Muse2と比較して軽量化にはなっているものの、ボディのサイズは大きくなっているので、こちらも外で使用するのは厳しいかな。睡眠時に特化しているもののように思う。カチューシャより大きなバンド型デバイスをつけて何かをするというのは中々抵抗あるよね。デザインという意味でも、睡眠以外の用途で使用するのであれば、Muse2の方が汎用性は高いような印象です。

 

少し話は逸れますが、何らかのデバイスを顔付近につけながら眠る、というのはアリなのかな?と若干懐疑的です。

人は睡眠が深いとシンプルに動かなくなるので、睡眠状況は枕元や体のどこかに加速度計などの動作を計測できるセンサーを設置すれば測定は可能。AppleWatchとかでも計測できるね。

こちらのデバイスの方がセンサーの情報量が多い(脳波&心拍&加速度)ので、加速度のみから計測したものと比較しておそらく高精度なのだろうけれど、その差が如実に出ていないと、「AppleWatchとかでよくない?」となるように思う。それくらい顔付近に装着するハードルは高いと個人的には思っていて、つくづく、顔付近に接触する必要のある脳波デバイスはその価値を明確に示さないと使用されないな、と感じております。

【考察】日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年

世界的なコンサル企業のガートナー社が、毎年恒例の「ハイプ・サイクル」を今月10日に発表しましたね。今回発表のものは「日本における未来志向型インフラ・テクノロジ」とのこと。心踊るワードですね。

過去を遡りつつ、どんなのが出てきたか見てみます。

 

ハイプ・サイクルとは?

言わずと知れた世界最大級のIT技術のリサーチ&アドバイザリー会社であるガートナー社(Fortune500の7割以上が顧客とのこと。世界を牛耳ってますね)が定期的に発表するレポートです。テクノロジーとアプリケーションがただのハイプ(誇大広告)なのかそれとも本当に実用的になりそうなのか、それらの変遷をわかりやすくマッピングしたものです。

IT業界のトレンド予想、みたいなイメージで見るのが良いと思います!

どんな風に見るの?

最初に見方の説明から。

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https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20200910 より引用
縦軸は「期待度」:

まず縦軸は「期待度」ですね。上に行けばいくほど期待されている技術になります。ちなみにこの「期待度」は何を持って判断しているのかは公表されておりません。メディアでの取り上げられ方と相関性はあるのでしょうが、この辺りはガートナーのリサーチャーやアナリストの考察とノウハウが多分に入っているのでしょう。

横軸は時期:

横軸の指標は以下の通りです。

(本サイト:https://www.gartner.com/jp/research/methodologies/gartner-hype-cycleより引用)

●黎明期: 潜在的技術革新によって幕が開きます。初期の概念実証 (POC) にまつわる話やメディア報道によって、大きな注目が集まります。多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていません。
●「過度な期待」のピーク期: 初期の宣伝では、数多くのサクセスストーリーが紹介されますが、失敗を伴うものも少なくありません。行動を起こす企業もありますが、多くはありません。
●幻滅期: 実験や実装で成果が出ないため、関心は薄れます。テクノロジの創造者らは再編されるか失敗します。生き残ったプロバイダーが早期採用者の満足のいくように自社製品を改善した場合に限り、投資は継続します。
●啓発期:テクノロジが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まります。第2世代と第3世代の製品が、テクノロジ・プロバイダーから登場します。パイロットに資金提供する企業が増えます。ただし、保守的な企業は慎重なままです。
●生産性の安定期: 主流採用が始まります。プロバイダーの実行存続性を評価する基準がより明確に定義されます。テクノロジの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつあります。

この区分も基本は数値などの明確な判断基準は公表されておりません。期待度と同様にガートナー社の独自のノウハウがあるものと推測できますね。

今回のハイプ・サイクルはどんな位置づけ?

今回発表のハイプ・サイクルは「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」。「日本の」かつ「インフラテクノロジー」の今と未来の様子をレポートしてくれているものと考えて大丈夫でしょう。

ちなみにハイプサイクルはこれ一種ではなく、世界版や他のジャンルのものも様々あります。日本限定ではないですが、他には「先端テクノロジのハイプ・サイクル」は基本的なトレンドを抑える為には見ておくべきと思います。

このトピック(日本における未来志向型インフラ・テクノロジ)は今年から?なのかなの。昨年までは日本版はただのテクノロジだけだったように思いますが、細分化されたのでしょうか。

 

では、みてみましょう!

ガートナー社の考察から:

COVID-19の拡大に伴い、普及が進む「ロボティック・プロセス・オートメーション」と「デジタル・ヘルス」

(本サイト:https://www.gartner.com/jp/research/methodologies/gartner-hype-cycleより引用)

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とデジタル・ヘルスが、幻滅期を超えて普及に向けて動き出しているようです。

RPAの促進はそうでしょうね。2019年の日本版ハイプ・サイクル(「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」:https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20191031 でも工業用のセンシング技術の発達が触れられていましたが、このコロナ化でまずますオートメーション化と効率化が進むにあたり、RPAの普及は間違いないと個人的にも思います。レポート本文でも言及されていましたが、夢見がちなものよりも実際に「使える」現実的なものが普及してくることも、容易に想像できます。売上が減り、各社利益最大化のためのプロセスの効率化にしのぎを削る状況で、イノベーティブな要素にはなかなか手はでにくいでしょう。

デジタル・ヘルスは少し勘違いしがちな単語だと思います。ここでの意味は、ヘルスケア業界におけるデジタル化の促進のことを指しており、オンライン診断などの遠隔医療などの医療・診療行為のデジタル化が主です(あくまで主であるだけで、遠隔診療系に限定している訳ではないようですが)。

AppleWatchが血中酸素濃度を計測できるようになったこともあり、生体センシングによるヘルスケアの促進のことを指しているのか、と一瞬心躍りましたが、もっと現実的なもののようです。ただ、オンラインの診断や診療、医療アドバイスが普及してくると、当然普段のヘルスケア情報もあった方が良いとなるはず。その時には、生体センシングの出番ですね!

遠隔が基本とすると、装着行為に始まるキャリブレーションのプロセスをユーザーに任せることになります。そうすると本格的な治療行為というのはまだ難しそうですが、ウェルネスよりも一歩踏み込んだ、診療判断の補佐情報として使用する、健康診断の問診票のより精度の高い情報として活用する、などの使用用途は今後不要な対面を避けるという方向性の中では、より普及してくるものと思います。

個人的にはAR(拡張現実)も幻滅の谷を超えて欲しい。。遠隔コミュニケーションにおいて必須となる要素ですし、これがインフラとして普及してくると、生体センシングの活用シーンも大きく広がるはずです。

 

各種要素をみてみましょう!:

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基本的にはこのブログのタイトルの通り、私は生体センシングが好きなので、生体センシングが該当しそうな領域をみていきます。

黎明期にあるスマート・ワークスペース、デジタルツイン、次世代型リアル店舗なんかはまさにセンシングからの適切な情報判断が必要となる領域ですよね。

①スマート・ワークスペース × 生体センシング

スマート・ワークスペースは、Weworkのような近郊の空きビルを貸しオフィスにしてしまう新しいビジネスモデルメインの見方や、Zoom等のwithコロナ時代の新しいワークスタイルに合わせたテクノロジー(主に遠隔コミュニケーションに特化と思います)の見方があると思いますが、生体センシングも大いに活躍できる領域であると思います。

例えば今後議論のマトになるであろうセンターオフィスの「皆が集まりたくなるオフィス」にする役割や、ますます競争が激しくなるであろうシェアオフィス業界の、顧客を誘引する付加価値として、生体センシングによるその人にあった集中・リラックス空間の演出や、空間自体の評価のためのセンシングなど、大いに可能性があると思います。

②デジタルツイン × 生体センシング

デジタルツインもなかなか可能性に満ちていると思います。

現在ではデジタルツインに関連する技術やサービスは、多くはゲームエンジンを活用して、まず人を共同の空間にジャックインさせるようなソフトの仕組みに各社注力しているような印象を個人的には持っております。しかしその後、ジャックイン先が安定してきた際に、ジャックインする個々人の状態をより詳細にバーチャル空間上に表現したいという流れになるのは自明なように思います。その状態の把握にはエッジテクノロジとして当然センシングが必要となり、かつ人の心地よさやコミュニケーションといった「感性」や「人体の感じ方」の要素を取り入れるためには生体センシングが必要となるわけです。

バーチャル空間にジャックインするためには基本的には何らかのガジェットを装着する必要があり(VRスコープが有力そうですよね)、その為センシングはとてもしやすい環境になります。顔面付近に装着するデバイスなら、脳波も心拍も加速度も筋電も基本的には取り放題。そしてそれはどのメーカーも容易に思いつくことと思いますので、間違いなくセンシングは流行る、はず!

③次世代リアル店舗 × 生体センシング

次世代型リアル店舗もいいですよね。個人の趣味趣向をセンシングで取りたい、というのは昔から小売は試みていたりしましたがなかなか上手くいっていないですね。せいぜいが面白PRイベント止まりで、しっかり購買まで持っていける継続性のあるサービスになっている例は私の知る限りありません。

基本的には技術を入れる場所としては商品単価の高い日用品ではなく、高級ブランドの洋服や化粧品などの商品単価の高い製品の購入時に技術をど運輸する形となると思います。特に化粧品は、Withコロナの文脈もあり、従来の対面型&テスターを試してもらうスタイルを変更しなくてはいけない、かつ高単価商品のため売り場改善のための財力があるため、この次世代型リアル店舗への投資は今度増えてくると予想します。対面営業の効果検証のためのセンシング、対面販売時に顧客をセンシングして販売員の接客を評価する、顧客の心理状態に合わせて接客方法を変える、だったり、肌の状態のセンシングで本当に自分にあった化粧品をリコメンドしてくれたり、様々な可能性が考えられますね。

④コネクテッド・プロダクト × 生体センシング

コネクテッド・プロダクトもセンシングの可能性が十分にありそう。ネットワークに常時接続し、最適な状態に変化するプロダクトのことを指すこの用語(基本はIoTといえばこのコネクテッドプロダクトのことを指すようです)。生体センシングから使用者の状態を取得して、その状態と、その他の環境的要因や作業内容の情報とを合わせて、さまざなな判断をしてくれるプロダクトはありえそう。

スマートホームと連携するスマート家電やロボットなどが、自分が家に帰ってくると疲労状態や気分などに応じて家を快適な温度にして、明日に疲労を残さないように最適なベッドイン時間と食事内容をアドバイスしてくれて、それに合わせて照明や温度・湿度を時間ごとに操作してくれる、などなど、妄想は膨らみますね。

 

 

以上、定期的に出てくるハイプ・サイクルをみていると勉強になりますね。妄想も膨らみます。毎年答え合わせなんかをしていると、自分の先見も鍛えられて良いかもしれません!

 

 

 

<コンペ備忘録>ヤングスパイクス・インテグレーテッド部門日本代表選考会(2018)

若手クリエイターの登竜門!

ヤングカンヌ/スパイクスコンペティション2018日本代表選考会・インテグレーテッド部門の挑戦記録です。備忘録も兼ねて。

 

 

コンペ概要:

ヤングカンヌ/スパイクスコンペティションとは

ヤングライオンコンペティション(通称:ヤングカンヌ)、及びヤングスパイクスコンペティションは、カンヌライオンズ、スパイクスアジアそれぞれで行われる30歳以下のプロフェッショナルを対象としたコンペ形式のオフィシャルプログラムです。各国の代表2名1チームが参加し、現地で与えられた課題に対し、定められた時間内に作成した映像や企画書の提出、またはプレゼンテーションにより、GOLD, SILVER, BRONZEを決定します。

https://www.canneslionsjapan.com/youngcompetition/aboutより引用>

 

結果:

GOLD!日本代表に選考されました!

ちょうどクライアント先に向かう途中で、横断歩道を渡っている時に電話で結果のご連絡をいただきました。人目も憚らず大きな声出ましたね。今でもその時の感動、覚えてます。

 

チーム:

・相方:アードディレクター。ビジュアルの全てを担当

・私:コピーライター。文言(英語)の全てを担当

アイディエーション〜企画設計までは2人で。そこから上記の役割で分業、の進め方。この回で2回目のペアでした。

 

実際の時間の使い方:

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9/5(水):ブリーフ読み(別々)(2h)

・英語担当が私なのでまずはざっと翻訳し、相方に共有。2人で別々に読み込みます。

・使い捨てプラスチック削減の、世界の広告事例を調べます。

・上記2点を踏まえて、どんなのが勝ち筋/負け筋なのか考えます。

 アイディアはこの時まだあまり出さないです。思いつけばもちろんOKだけれど。事前知識がない状態で、ズレてるけどいい感じのアイディアが思いついてしまうとなかなか捨てられず辛いので、まずはブリーフの解釈とどんなアイディアが勝ち筋かを2人で共有できるまでは、あまり考えないです。

今回のテーマは「使い捨てプラスチックの消費量削減」でした。

9/6(木):ブリーフ解釈&事例調査内容の共有(2h)

ここで2人の解釈と事例調査の結果を共有して、勝ち筋/負け筋を整理します。

どんな感じのコンペになるか(何系のアイディアが多く出てきて、どんなアイディアグループができて、審査員がどんな会場でどんな審査をするのか等)イメージしながら整理します。

よく審査員になりきります!本コンペはスケジュールが急で、きっと審査は夜間。審査員は仕事で疲れている中集められて、「うゎーこれ全部目を通さなきゃいけないのかぁ。もう11時だよ…」なんて会話をしているイメージでした。

そんなイメージもしながら、勝ち筋/負け筋は以下のように整理しました。

①(過去事例から)海系・タバコ系はNGと負け筋と判断

海系はとにかく実際の過去事例が多すぎました。海にビニール袋が浮かんでいる絵では絶対に勝てない。2015年に有名になったこのウミガメの鼻からストローを抜く動画、これよりも強いインパクトを残すことは困難と考えました。他にも海や海岸でのプロモーションは結構過激なこともやっており、なかなか過去事例に勝るインパクトを残すことは難しいと考えました。

youtu.be

また、ブリーフにはタバコのフィルターも代表的な使い捨てプラスチックゴミと記載があったのですが、これも負け筋と考えました。タバコとプラごみを結びつける事例はなかったのですが、そもそもタバコがメインの過去事例は非常に多いため、タバコを混ぜてしまうとプラごみよりも要素が強く出すぎてしまい、伝えたいことが散らかってしまうと感じました。他のテーマでもそうですが、メインテーマを伝える際に「ペット」や「赤ちゃん」など、それ自体のメッセージ性が強くかつ多くの広告で使用されている要素を取り入れると、よほど関係のあるコンセプトでない限りは、主張が強すぎてメッセージが伝わりにくくなってしまうと考えています。

②珍しいもの(マイクロプラスチック)に飛びつかない

ブリーフにはマイクロプラスチックの記載がありました。ペットボトル片などのポイ捨てされたプラスチックが自然分解されず、細かい砂状になったままいつまでも漂っている環境問題です。このマイクロプラスチックはそれ自体が見た目にもキャッチーで過去事例も少なく、非常に使いやすいと最初は感じました。しかし、それゆえにアイディアの被りが多そうなこと、またマイクロプラスチック自体があまり知られていないため、その目新しさに注意が奪われて本当に伝えたいメッセージが消費者に伝わらないのではと考えました。

③「プラごみのポイ捨て」自体を減らす施策ではないことを抑える

ブリーフは使い捨てプラスチックの消費を削減することをゴールにしていました。プラごみのポイ捨てを削減するというものではありません。使い捨てプラスチックの消費自体は悪ではない行為である一方で、ゴミのポイ捨てはわかりやすい悪です。そのためポイ捨ての方が考えやすいしアイディアも映えるものが出てきやすいです。ただブリーフのゴールとは違うのでNGです。そんなアイディアが出てきたとしても、それは棄却しようと、また悩んだときに「そっちに逃げないようにしよう」と相方と確認し合いました。使い捨てプラスチックの使用・消費それ自体をどう「控えようかな」と感じさせるか、そのアイディアに集中しようとしました。

④認知までか?行動までか?

PR部門では行動変容まで起こすのが施策の基本とされていると思いますが、インテグレーテッドの場合は、メディア種類も広く色々な仕掛けができるので、必ずしも行動変容まで行く必要はないのでは、と考えました。行動変容まで行くとどうしても少し地味になり、パワーのない施策になるのではというイメージがあったからです。行動変容までの道筋を固く描き、真面目な内容になってしまうのは避けたかったです。ましてや今回のテーマは実際の事例が多く、過去事例を越えるためには「少し飛んだような」施策が求められていると感じていました。そのため今回は、「認知まででもいいからとにかく派手なもの」を意識しました。もちろん行動変容までいけるに越したことはなかったので、限定したわけではないです。行動変容まで描き切ることのプライオリティを下げただけでした。

⑤ネガティブにならないように

これは何をやらせても基本だと思います。ネガティブでショッキングなメッセージをかくと企画書もとてもインパクトのあるものができるのですが、それは簡単で、こと実施が求められていないヤング系コンペでは求められていないので。

 

上記5点を共有しつつ、まずは別々でアイディア出しをしました。

今回の企画アイディアは、この夜に思いつきました。

9/7(金):アイディア出し(共同)(6h)

前日の個人アイディアのすり合わせからはじめています。発散のフェーズで、とにかく数を出します。前日9/5のアイディアは個人的にはかなり勝ち筋に使いものと感じていましたが、それは相方と共有した上で一旦置いておいて、他のアイディアを考えます。

基本は無秩序で考えます。何かお互いにテーマ別で考えたり(「〇〇の視点で考えてみよう」など)、片方が言った内容を膨らせたり、など色々しますが、基本的にやり方は縛らないです。琴線に触れるならお互い自由に膨らませようと言った具合です。特に相方は絵からアイディアを出すタイプで、私は言葉からなので、正直面白いと思う琴線も合わなければ、アイディアの出し方もお互い全く理解できないです。笑

基本的にはブリーフの解釈に関しては話しますが、アイディアに関しては一緒にやっていても結局それぞれ黙々と考えているような状態になります。

ここでもう1案、なかなかのアイディアが生まれ、ストックが2案になりました。

9/7(金):アイディア出し(別々)(2h)

まだ発散です。この時点でストックアイディアは2案ありましたが、意識的にあまり形にしない状態のまま進めます。ビジュアルなど一度固めてしまうと、そのアイディアにハマってしまって他のアイディアが考えられなくなるからです。ギリギリまで発散します。

9/8(土):アイディア出し(別々)(15h)

まだまだ発散です。一方で時間もないので、ビジュアライズはしませんが、残っている案(この回では2案)の事例調査をします。すでに実施されていた場合には当然泣く泣く削除します。似ている過去事例が見つかってしまっても、何かと理由をつけてそのアイディアを生かそうとしますが、ここはシビアに見ます。過去事例を潜るように変に歪曲させてしまっても大方いいものにはならないので。ただこの段階で類似事例を見つけてしまうと心のダメージが大きいので、やはり過去事例は最初の段階で見ておくことが良いように思いますね。

9/9(日):アイディア出し(共同)(11h)

前半は発散でした。お互いのアイディア共有からまた発散させます。

後半は収束させます。結局前述の2案が残り、両案ともに簡単にストーリーとビジュアルイメージを起こして(スケッチレベルです)、どちらがいいかを判断します。

結果、最初に思いついた方を選択しました。決め手はメインビジュアルの絵映えです。インテグレーテッドは様々なメディアでの拡散が求められるので、アイコニックなビジュアルイメージが一つドンとあるのは重要なことだと話し合い、結果選定しました。

9/9(日):製作(3h)→提出

ここはもう集中!です。相方はビジュアルを、私は文言を書きます。文言は割と簡単(アイディア収束の段階ですでにある程度日本語ができているので、あとは翻訳のみ)なので、ささっと終了させ、使用画像選定のフォローに回ります。

本当は9/9の政策はもう少し早めに終わらせて、18:00ごろには提出できるようにと考えていたのですが、この回は2人ともこれだ!というアイディアになかなかたどり着けず、発散の時間が長くなってしまい、提出はギリギリになりました。個人的には2日目の時点でこれだ!となっていたため、相方へのプレゼンと説得にむしろ時間を使ったような変わった回でした。

一方で、結構アイディアにとらわれて、2日目以降のアイディアの数をあまり出すことができなかったのは反省です。

 

総括:

褒めてやってもいい点:

・認知で止まってもいいと判断できたこと。これは最初に部門過去作品をしっかり見て、それでも勝っている事例があることを確認できていたから。割としっかり部門研究ができていたと思います。

・最初にコンペ全体のイメージ整理と事例調査を行い、勝ち筋/負け筋の整理をしたこと。これによりアイディア出しの精度が上がりました。

・ビジュアルのインパクトにこだわったこと。これも過去事例からの推測になりましたが、結果的に間違いではありませんでした。

・最終残った2案から、本案を選定できたこと。今回落とした2案目はShortListの別のペアのアイディアに酷似していました。我々は製作の時間をあまり取っていなかった為、おそらく2案目の方を選定していたらクオリティで比較されて負けていただろうと思います。(ただ、2案とも結局良い勝負ができていた案だったというのは自信になりました。)

まだまだ改善が必要な点:

・最初のアイディアにハマって、その後のアイディエーションの数を出せなかったこと。結果オーライではあるものの、基本はすぐに切り替えるべきです。最初のアイディアが絵映えするものだったので、ビジュアルイメージが自分の中でしっかり固まってしまっていたのが問題だったかもしれません。ビジュアルが固まっても切り替えられるようなマインドを持ちたいですね。

・製作の時間が短すぎました。最終日は丸々製作でもいいくらい。アイディアが被らなかったから良いものの、被っていた場合はビジュアルと施策内容のクオリティで勝つしかない。今回は類似内容が出ていたらクオリティ的に負けていたと思います。

 

 

丁度来週の9/8から、2020年のインテグレーテッド部門のコンペが始まるようです。懐かしさを感じたので書いてみました。

他の挑戦記録も自身の振り返りのためにも今後書いていこうかと思います(シンガポールでの本戦も後日)。

 

 

 

 

センサーメーカーのビジネスモデルについて

脳波・心拍などなどのセンシングデバイス市場は基本的にニッチ!

イヤホンや腕時計みたいにバンバン売れるものではありません。

その中で、センシングデバイスメーカーはどのようにビジネスを成立させているのか、リサーチ&解説します。

 

 

 

高価格で狭く?低価格で広く?

バイスの性能をどの程度まで絞り、かつどの程度の価格帯で提供するか。

 

1)一番星を目指せ!「高価格で狭く」

どんな企業のどんなモデル?

極めて高精度の計測ができるものをニッチな市場に販売するモデル。

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計測それ自体が価値になることが多く、他の提供価値やサービスモデルを考える必要がない。

例えばMRIを製造しているキャノンメディカルシステムズ社や、多電極脳波計のメーカーの日本光電社など。

彼らは高精度の計測が可能な機器を、大学などの研究機関や、企業のマーケティング部門、また診断用途に使用する医療機関などに販売している。

極めて高い金額(最低でも数百万〜億)での販売が基本であり、かつ機器自体のみではなく付随するソフトウェアも専用のものを販売する為、一回の売上単価が非常に高い。

その分市場は小さいが、その高い売上と利益率で成立させている。

機器とソフトウェアの一式を一括販売し、あとはおまかせ、のスタイルが多い。基本的には機器を使いこなすのはユーザー側の仕事で、専門職の方の使用を想定していることが多い。イニシャル一括、ランニング(サポート含む)ほぼなし、の分かりやすい販売モデル。

またその機器特有の消耗品も継続的に販売することが可能で、一度販売すると楔のように顧客との関係性を繋ぎ止めてくれる存在になることも魅力的。

ポイントは?

製品の信頼性はもちろんのこと、それを提供する企業側の信頼性も重要になる。ベンチャー企業がこの領域に踏み込むことは中々に難しいと思う。また医療機器として販売することが基本となる為、その審査や医療機器メーカーとしての審査をパスする為の金銭的な体力も必要になる為、ハードルは高い。

生理指標では脳周りしか難しい領域だと思う。心拍・加速度・表情・音声などは、心拍は医療用途の使用も可能だけれど、計測が簡易のため高額でセンシング機器を販売することが難しいこと、また加速度・表情・音声は医療機器のように本格的に診断等で使用するには個人差や状況による計測精度のブレを補正しきれていないことから、中々高付加価値のものとして販売するには難しいように思う。

メリットは?

・計測それ自体が価値の為、他のサービスモデルを考える必要がなく、技術開発・営業リソースを一点集中できる。

・一回の単価が小さく、購入層が広いため、事業開発計画が立てやすい。

・イニシャルでの刈り取り想定のため、キャッシュフローが早期安定しやすい。

・一度製品を導入するとスイッチングコストが大きいため、顧客は中々切り替えない。そのため、製品に付随するソフトや消耗品を継続的に販売しやすい。

・一度そのニッチな市場で認められると、他社が追随しにくい。

リスクは?

・サービスモデルに幅がなく、他産業からのモデル自体の破壊(計測行為が必要なくなる等)があった場合に対応できない。

・一括納品で終わることが多く、データ蓄積等の「使用されるほど大きくなる」プラットフォーム機能がないことが多く、事業の発展性に欠ける。

・医療機器承認、企業ブランド、多大な開発投資など、時間とお金がとてもかかる。

・(どの市場よりも特に)測定値のミスなどの失敗リスクが高い。

 

2)市場を埋め尽くせ!「低価格で広く」

どんな企業のどんなモデル?

ある程度の精度のものをサービスと合わせて広く市場に展開するモデル。

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計測それ自体を価値にすることは難しいため、何らかのサービスと結びつけて販売することが多い。

例えばFitBitやNeuroSkyなどの、俗に言う「ウェアラブル計測機器」を持っている企業がこのモデルになることが多い。

彼らは例えばランニングや健康管理などの何らかのアプリケーションとセットにしてコンシューマ向けに販売、もしくは働き方支援やオフィス設備と一体化したサービスとして企業に販売するなどしている。

バイス単体の売上単価は低く(〜5万円程度)、その分コンシューマも購入ができ、市場規模が大きいモデル。

ハードを製造開発する必要があるため、ある程度の資金と時間は必要ではあるものの、基本的にシンプルな原理さえ知っていれば生理指標の計測デバイスは製作できてしまうため、ベンチャー企業でもトライできる領域となる。

クラウドファンディング系のサイトではよく、小型でオシャレなデバイスが出ている。初期投資さえある程度の金額であれば、実現できてしまう。

ポイントは?

参入障壁が低く競合が多いため、なんちゃってで製作するとすぐに他の企業にパイを取られてしまう。また、デバイスそれ自体の価値が低いため、どんなサービスと連携させるかがかなり重要となる。デバイスメーカーとしての力量はもちろんだが、サービスデザインやビジネスモデル開発の力量も大きく必要となる領域。

本領域の多くの企業は、デバイス単体の売上では単価が低く儲からないため、デバイスのデータを利用するためのAPIや、データから集中やリラックスなどの意味づけをするアルゴリズムのライセンス料で刈り取るモデルとなっている。

メリットは?

・PR如何によっては、一気にバズらせて市場を沸かせることができる。

・サービスモデルに幅がある為、エッジデバイスとして広く浸透すれば(iphoneのように)、そのデバイスを軸に各社がサービスを展開するような、プラットフォーマーポジションに立てる可能性がある。

・アプリーケーションやサービスと一緒に販売する為、データの蓄積→二次利用やアグロリズム精度向上等の、成長性があるビジネスにすることができる。

 

リスクは? 

・計測以外の提供価値を考えなくてはいけない為、製品開発の知見だけでは戦えない。

・購入層が広いため、製造とは別にPR戦略ないし費用を確保する必要があり、なんだかんだ費用がかさむ可能性あり。

・ランニングでの刈り取り想定のため、キャッシュフローが長期化する。

・スイッチングコストが小さいため、製品品質もしくはサービスに落ち度があるとすぐに切り替えられてしまう。サービスで何らかの縛りを持たせるような工夫が必要。

・すぐに真似される可能性が高い。

 

 

次回、まだまだもう少し深掘ります!

 

 

そもそも”集中”って何?

個人的にもっとも生理指標計測の必要性を感じる要素”集中”に関してまとめます。

かなり個人的な意見も書いてありますので、ご容赦くださいませ。

 

そもそも”集中”って何?

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◾️色々研究されているようです

学術論文などでは、

「ある限定された対象に対して独占的に、また持続的に注意を傾注すること」

と定義されているよう。

傾注=気が散らない状態であること、つまり他の刺激(仕事だとメール通知とか)がきたとしても心を乱されない状態であることのよう。

改めて言語化すると難しく聞こえるけれど、要は「気が散らないで一つのことに注意を向けられている状態」と言えるだろう。集中に関しては多くの研究論文があるけれど、その中での集中の定義は概ね上記のようなもので、僕らが「集中とはなに?」と聞かれた時に答えそうな内容と概ね違いはないみたい。

 

◾️個人的に一番しっくりきている解釈は…

ちょっと話をややこしく感じさせるのは、その集中の対象になる内容の難易度によっては、それほどの力を必要としなかったり(例えば3+4=?みたいな簡単な計算問題だったり)、あるいは使用する力が違ったりする場合(何かを纏める力だったり、アイディアをうむ力だったり、記憶力が求められたり)があること。

個人的にはある論文で定義されていた、

「集中状態=実行している仕事に必要な感覚のみを適切に働かせていること」

が集中の説明としては一番しっくりきている。

なのでタスクの種類によっては集中状態を推定する為の手法やアルゴリズムは、厳密には切り替えていく必要があるように思う。

また集中状態に関する研究論文では、「集中は作業状態と短期休憩を繰り返し、長期休憩に行かない状態のこと」と休憩も混ぜて考えたりとか、集中の”深さ”を考慮したような「集中モデル」はたくさん研究されているのだけれど、結構キリがない&検証のしようがないのでは?と個人的には思っているので、上記の「実行している仕事に必要な感覚のみを適切に働かせていること」の解釈で良きかな、と思っています。

 

 

集中ってどんな状態?

 

◾️本人が「集中していた」といえばそれが集中状態?

まず当然のように口頭による確認。「集中していましたか?」と聞く方法。

ただこれは、

・そもそも集中がなんなのかの理解に個人差がある

・集中度合いと作業進捗に必ずしも相関があるわけではない

などの理由で、必ずしも正確ではないとされている。

ただ、様々な論文では基本、口頭による集中度合いの評価は信用しているよう。確かに集中の理解には個人差があるけれど、大人なら経験値としてなんとなくわかるよね。

作業進捗や成績と集中度合いに相関がないケースがあるのも、それは認めざるを得ないと思う。得手不得手もありみんながみんな効率よく作業をこなせるわけではないので、まずは一生懸命やっていること=集中で良いのではと思う。

とはいえ、口頭での確認指標は個人差があるのは上記の通り間違いないので、生理指標のように定量的な指標での可視化が求められるよね。

 

◾️ゾーン?瞑想?

よく集中状態=ゾーン状態と聞きますよね。

でもこれは本当なのかな?あなたのゾーンと私のゾーンは同じことを言っているのだろうか?共有するすべがないからわからないし、そうするとそもそもゾーンなるものが本当に存在するのかもわからない。個人的に「あの時ゾーンに入ったな」と言える経験はないなぁ。

脳波などの生理指標でゾーン状態が計測できる、などと耳にするけれど、個人的にはとても懐疑的。そもそも上述の通り「今ゾーンに入った!」など誰がわかるのだとも思うし、ゾーンに入れてかつその時その人の状態が計測できていたとしても、サンプル数はどのくらいなのだろうと思う。一桁のサンプル数でアルゴリズムを作っても信頼性にかけるし、3桁のゾーンデータが集まっているとも到底思えない。

集中状態=瞑想状態はあるのかもしれない。

ただこれも、瞑想状態ってどんな状態?となるよね。絶対。

瞑想時には特殊な脳波が出ている(β並より高周波のΓ並が出るという話も聞いたことがあるが)と聞いたことがあるが、これも本当だろうか。怪しいものである。これも結局ゾーン状態と同様で、瞑想状態に「入っている」サンプル数が少ないため、瞑想状態ではなくその人(もしくは一部の人たち)の個人の感覚を表現したものに過ぎない可能性が高いように感じる。やっぱり難しそうだ。

 

 

では集中はどのように計測する?

 

◾️脳波だとすると、α波なの?β波なの?

基本的には、α波は安静時に、β波は覚醒時にでる脳波なので、意識を集中させたりなんらかの活動をした際にはβ波が出るとされている(かっこいい言い方をすると「β波が優位律動として出現する」なんて)。

ただα波が集中時に優位に出現するという説もぼろぼろあるようで、矛盾しているので少し調べてみると、どうやら音楽の聴講時に、音楽に集中するとα波が優位になるというのは論文でも検証されているみたい。

ただ音楽聴講時にもβ波が優位になるという検証もあり、個人差にも依存するような割と曖昧な内容なように思う。クリエイティブな仕事をしている時にもα波がでるという話もネット上では出ているけれど、論文は探せていない(基本、査読付き論文に書いていないことはあんまり信じない方がいいとの持論から判断してます)ので、あんまり信ぴょう性には乏しいのかなと思う。

一方で、よくある計算タスクや読書でタスクスコア(正答率とか理解度とか)と連動してβ波が出てくるというのは割とどの論文でも共通の内容のため、ここでいう集中状態と相関のある指標としてはやはりβ波を使用するのがいいように思う。

 

◾️脳波のβ波が表すのは集中?ストレス?

ただし、β波はストレスの指標でもあるので、ストレスの値を混ぜないようにしたい。

基本は、「脳は活性化しているがストレスは感じていない状態」がベストな集中状態と定義できるはず。

単独指標では、脳波の、あまり高周波過ぎないβ波(13Hz-16Hz程度のLow-β波と言われる周波数帯)が使用できるとされているけれど、脳波には当然個人差があり、かつ研究用でしっかりインピーダンスを精査した上で計測するのであればまだしも、簡易性を追求したウェアラブル脳波デバイスであれば、そもそもβ波をLow-Middle-Highで区切るのも個人的には不安。α波帯の低周波帯、β波帯の高周波帯の2種類くらいに区切るのがちょうどいいのではないかと考えている。3分割した研究論文もそれほど数があるわけではない。

個人的に現時点で一番効果的と感じているのは、脳波+なんらかの指標の組み合わせで、脳波で脳の活性化を抑えつつ、他の指標でストレス値を算出する方法で、脳が活性化しており、かつストレス値が低い状態であれば、理想の集中状態であると言えるはず。

この場合、脳波+心拍の同時計測が望ましいように思う。脳波で脳の活性化を計測しつつ、心拍で交感神経と副交感神経のバランスが良い状態、が集中状態と定義できるはず。かつ心拍のトータルパワーも高い値であれば、疲労も感じていない理想の状態と定義できると思う。

ただしコンテクストはUX設計である程度統制しなければならない。それは例えば、机に向かっていたとしても、夕飯のことを一生懸命考えていれば、それは生理指標では「集中している」と捉えられてしまう(脳は活性化しているのだから当然といえば当然なのだけれど)からである。なので例えば、e-learningなどのコンテンツ側での進捗管理などの、ある程度の統制が必要になる。

 

 

集中の可視化に市場価値はあるか

 

◾️可視化単体で戦える?

集中以外のリラックスやストレスの指標に関しても同じことが言えるのだけれど、可視化それ単体では市場価値は低いと思う。Fitbitなどのリストバンド型ウェアラブルバイスは「活動量の可視化」のみで市場を沸かせたけれど、あれは「ああいうことができるんだ!?」という新規性のインパクトで消費者を興奮させたのみで、あんまり継続性はなかったよね。今は生死指標の可視化に驚いてくれるユーザも少ないし、可視化+何かサービスがないといけないと思う。

とはいえ可視化ができなければそこからサービスを作ることができないので、とても重要な要素であることは間違いない。

なので結論としては、可視化だけでは市場価値はないけれど、価値あるサービスを作るためには必要な要素ということになると思います。

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◾️キーワードはパーソナライズ

基本は集中の可視化を活用したサービスというと、パーソナライズがキーワードになると思う。なんせ個人の集中力を個別に可視化するわけなので、その個人個人異なる傾向を生かしたサービスにしたい、というのは当然そうなると思う(一方でマーケティング目的で使用する場合には「100人中〇〇人のユーザが集中状態になりました」との全体最適の発想でものづくりをするけれど、それは今に始まったものではないので、今回置いておいて)。

個人的には、昨今の働き方改革の流れから、従業員のパフォーマンス向上に使用するのが良いように思う。結局働き方改革も、個人の意識改革を必要とするもので、個々人が自分のパフォーマンスをどのように向上させるかを考えなくては意味がない。自分がどうやったらパフォーマンスを向上させることができるのか、それを考えるためにもまずは、自分がどうやったら集中できるか、それを確認できる可視化の手法があるのは良いように思う。

 

 

今回はここまで。

次回は巷の生理指標活用ビジネスを紹介したい。

あとは”リラックス”や”ストレス”の指標の意味も改めて考えてみたい。

センシングデバイスはどんなUXであるべきか

マーケティングや研究利用ではなく、サービスとして使用する場合に、こころの状態を計測するサービスはどんなUXであるべきか、実体験も踏まえて考えてみる。

 

◾️そもそもそれ、アンケートでよくない?

クライアントから話を受ける際に、割とある話。特に脳波に関しては、あまり知見のない人にとってみれば「何でも分かる神の指標」のように認識されていることが多い。

結果、こんなシーンであんなシーンで計測するサービスを作りましょうなどという話になる。でも例えば「ユーザーの趣向性を取得する」ような機能を実装したい場合、確かに脳波でも近い値を取得することは可能なのだけれど、「それは直接アンケート調査で聞いてしまった方が早いのでは?」ということが往往にしてある。

実際そうで、脳波で趣向性を取得する場合にはそれこそ状況を結構しっかり作り込んで統制を取らなければいけないし、結果もファジーになりがち。アンケートの方が100倍簡単で、正確だ。なんせ好きか嫌いか直接聞いているからね。

ニューロマーケティングなどで、人の選択には無意識化での要素があり、それを脳波で捉えることができる、などという話がある。それは確かに間違いないと思うが、それこそ莫大な制作費をかける車などの製品やCMなどのマス広告のような単価が高く統計値として取得したい(広くマスにリーチする)ものであれば有効だろうけれど、多くの場合は、不確実性の高い購買選択を、判断できるほど脳波の趣向性診断は有用ではない。

使えば確かにできる、けれどもっと他に簡便な代替手段がある。こんなシーンは生体センシングではとても多いような気がする。

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◾️接触バイスvs非接触バイス

ユーザビリティを考えると、どんなシーンにおいても非接触の一本勝ち。接触バイスの方が優れているシーンは皆無であるはず。ただし、取得できる指標の数、計測精度、コストは圧倒的に接触バイスの方が優れている。

接触の場合、取得できる指標は限られている。脳波・皮膚電位は取得できず、取得可能なのは、心拍・音声・体温・表情・体動あたりと思われる。音声・表情はそもそも接触で取得する指標ではなく、体温もコロナ影響もあり今では非接触で取得するのがもはやデフォルトになっている(しかも医療用とで使用するため精度高め)。

でも心拍・体動に関しては非接触型の計測精度は接触型に遠く及ばない。体動は見た目で分かるほどの非常に大きい信号のため何とかなるかもしれないけれど、心拍はまだ非接触では実用に耐えうるものは少ないように思う。

つまり脳波・皮膚電位・心拍が非接触では使用できないということなので、結論としては、非接触であれば当然嬉しいのだが、こころを測る技術としてはやはりまだ接触バイスに頼らざるを得ないということになる。

「なるべく動かない」などのUX設計をした上での、ドップラーセンサー等を利用した心拍の非接触計測には期待したい。また心弾動図を利用したお尻や背中からの心拍取得などの、非接触ではないもののUX上皮接触に感じるようなセンシング技術には近い将来での実現性は大きいように感じる。

 

 

◾️どれほどの精度が求められる?

例えば計測前にインピーダンスのチェックをしないウェアラブルバイスよりも、研究用にしっかり準備をしてから計測するデバイス(アルコールで計測箇所を拭ったり、ジェルをすり込んだり)の方が、計測における精度はやっぱり高い。

でも実際にサービスにすることを想定すると、精度の高い計測結果が求められるシーンはそれほど多くないように感じる。当然、精度が高いに越したことはないのだけれど、そのために装着準備に時間をかけるようなサービス設計を組み込む必要はないという意味で。

また、大まかな集中力(脳全体が活性か不活性か程度)や感情(ポジティブかネガティブか、つまりストレスの有無)であれば、それほどの計測準備をしなくとも十分に取れる可能性は高く、実際にそれほどの精度が必要ない場合もあると思う。

ただ個人的にどうだろうと思うのは、例えば「感情を48種類に分割できる」などの”細かな違いを見分ける必要のある計測結果”と「うつ病の診断示唆」などの”確からしさが求められる計測結果”をウェアラブルバイスで算出できるというサービス。これらは精度が必要になるので、下準備も含めてしっかりとしたUX設計を行う必要がある。

 

 

◾️接触バイスは従来の行動に溶け込ませるべき!

・”測定する目的で”デバイスは装着させない

AppleWatchは従来の「時計を身につける」という行動を変えさせることなく生理指標を計測できているし、ヒアラブルデバイスは従来装着しているイヤホンをすげ替えれば行動変容なしに計測できる。JINSMEMEは眼鏡をすげ替えればいい。

このように、従来の行動を変えない、”測定するために”デバイスを装着させないUX設計は必要となる。

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・装着のメリットの提示は、なかなか難しい!

一時期流行した、Fitbitに代表される活動量計測用のリストバンド型デバイスは、「もともと装着する必要のなかったもの」を新たに装着するような行動変容を求めるものだった。

その場合には装着の大きなメリットがなくてはならず、活動量を取得できるというメリットでは、一部の健康オタクのようなユーザにしか受け入れられず、世間一般に広く普及することはなかった(とはいえ市場に新しい価値をもたらしたのは事実で、個人的にはFitbitはチャレンジングでとても素晴らしい動きだったと思う)。

一方で行動変容を求めないものであれば、与えるメリットが少なくても問題ない。そもそもやっている行為だった訳なので。

センシングデバイスでもたらすメリットはユーザ情報の可視化それ自体とそのデータを活用したサービス提供(趣味趣向に基づくリコメンドや、活動量に基づくトレーニング提案・ライフスタイル提案など)が一般的と思うけれど、それにはデータのある程度の蓄積が必要で、最初から感動を与えるようなサービスになる可能性は少なく、一定期間は”我慢して”やり続けてもらう必要がある。

そのため、初期の段階でユーザにメリットをあまり享受しなくても継続してもらいやすいUX設計にするのは割と重要なことと個人的には考えている。

 

・どんな接触バイスに未来がありそうか

脳波であれば、VRスコープ・帽子にうまく電極を潜り込ませている例が見て取れる。CPUを搭載する必要があるため、数10グラム重くなることは考慮しなくてはならない。帽子だとすると割ときつい印象がある。

①相性バッチリ、VRスコープ

VRスコープとの相性はよく(そもそもVRスコープは顔に接する形であんなに大きなデバイスを装着でき、かつ目・耳の情報を制限できるという点で全ての生理指標計測と相性が良いのだが)、前頭葉を中心にがっつり電極を配置することができ、かつ取得情報を映像に反映することも容易にできる。ただVRスコープを装着するシーンはまだ非常に限定的なので、そこは留意する必要あり。

今後の普及を考慮しても、例えば仕事中や学習時にある程度重めのデバイスを装着しながら行うシーンはまだ少し先の未来であるように思う。

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②眼鏡型デバイスは鬼門!

個人的な経験からの話になるけれど、眼鏡は本当に繊細なデバイスで難しい。数グラムの重さの増加で途端に普段使いができなくなるので、普段使いの眼鏡型ウェアラブルバイス普及させるのは至難の技。

一方で、普段使いをしない眼鏡にする場合(例えば特定の場所に来た時だけ提供するような)、個人に合わせて度を調整することが出来ないため、伊達眼鏡のような形になる。そうしたらそうしたで、眼鏡を普段からしている人は装着できない(自分の眼鏡オン眼鏡デバイスにするよ必要があるため)し、眼鏡を普段からしていない人には邪魔でしかないデバイスになる。

まさに八方塞がりで、個人的にはひっそりと眼鏡型デバイスは鬼門と結論づけてます。

③リストバンド型はサービス限定で花開く!

リストバンド型はUX設計によっては全く問題なく浸透させることができると思う。

例えばスポーツジムでロッカーの鍵をリストバンドにして、ジム使用中には装着するのは一般的だと思うけれど、これをウェアラブルにするのは容易い。

AppleWatchのように時計にするのはコンシューマに広く普及させるための一つの優れた解であるように思うけれど、シーンをある程度限定すれば、リストバンド型はまだまだ普及の可能性があるように思う。

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④加速度による心拍計測デバイスにはポテンシャルあり!

時計型ウェアラブルバイスのようにあまりサービスシーンを限定することなく広くコンシューマに普及しそうな次のデバイスとして、加速度センサーによる心拍計測デバイスはこの座に君臨できそうなポテンシャルがあるように思う。

椅子にしくタイプで脈派がある程度正確に取得でき、自律神経の計測→ストレス・リラックスの判断ができるようになれば、オフィスでもプライベートでも様々なサービスに利用できると思う。

現存のものはまだ動きのノイズに弱く、心拍数の取得はできるが脈派の取得はできない精度のものが多い。しかしながらこの部分は、例えばハード側はセンサーを包む緩衝材などの工夫、ソフト側は学習による動作ノイズの分離と、概ね改善の方向性は見えており、近い将来実使用に耐え売るものとして実装される可能性は極めて高いと感じている。

 

 

今回はここまで。

次回は集中とは何か、感情とは何か、などについて考えてみたいです。

またビジネス実装の可能性に関しても考えてみたい。

 

そもそも心拍とは?

こころを測る技術の代表格「心拍」を柔らかく紐解きます!

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◾️心拍とは何か

シンプルに心臓の拍動ですね。健康診断の時に計測すると思います。あれは1分間の安静にしている状態での心拍数(安静時心拍数)ですね。最大心拍数は年齢が高くなるほど下がりますね。心臓の拍動なので、運動に大きな影響を受けます。

外科手術のバイタルセンサーのように電気的に計測したり、血液中のヘモグロビンを使用して光で測ったり、拍動の振動を利用して加速度で測ったりと、心臓の動きは大きくてわかりやすいので様々な方法で計測可能です。

運動はとっても簡単かつ正確に取得できるのですが、反面、他の情報(ストレスやリラックスなど)を推定する場合には、この運動の影響をどう取り除くかが難しいです。PC入力やメモ程度の動きでも影響を大きく受けちゃいます。運動の推定がしやすい一方で、運動に大きな影響を受けてしまう指標ですね。

 

◾️心拍の計測方法

シンプルな指標なので計測方法はたくさんあります。指で手首の脈を抑えるだけでも計測できますしね(脈拍数≒心拍数です。同じではない時もありますが、正常時は同じものなので≒で)。そのぶん精度と拘束条件は脳波よりも手法によって差がありますね。

 

 

・血圧計

健康診断でよく見るやつですね。あの測り方は”オシロメトリック法”というそうです。腕を圧迫(加圧)して、そのあと減圧しますよね。加圧した時に血液が止まり、減圧し始めて血液が流れ始めると、脈拍が走り振動が発生します。その減圧開始時期の振動を最高血圧とします。そして減圧を続け血管が十分開かれた状態になると、脈拍による振動も落ち着いてきます。その落ち着いてきた時の血圧が、最低血圧ですね。そうでない時もありますが、正常時は基本、血圧≒心拍数です。

 

・心電図(ECG)

よく外科手術で見るやつです。心臓近くの胸部に電極パッチを貼り付け、心臓に伝わる電気信号を計測する方法です(詳しくは心房興奮や心室興奮など興奮する部位によって電位が異なるなどなどありますが、難しいですし割愛します)。周期的な波形で、一番大きなピーク(バイタルモニターでピンッとスパイク状に出現するあの波形です)をR波というのですが、このピークが心拍の1拍にあたります。心拍変動を見る際には、このピーク間の間隔の乱れを見たりしますね。RRI(R-R間隔)もしくはピークであることからPPI(Peak to Peak間隔)と呼ばれる指標ですね。医療用に使用する場合には、200Hz以上(5msより短い間隔で)のサンプリング周波数で記録する必要ありとのこと、脳波よりちょっと緩いくらいですが、それでもデータ量多いですね。そして当然のように安静時計測がマストです。医療用途や研究用途など、しっかりと高い計測精度を活かせるように、安静シーンでの使用が基本かなと思います。

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・画像処理

主に顔画像からですね。特に鼻周りの画像がわかりやすいと聞きます。血液の中のヘモグロビンの、緑色の光を吸収しやすい性質を利用して、顔表面の皮膚の色変化を計測して脈拍を捉える方法です。平たく言うと、脈がドックンとなる一瞬には顔色がかすかに良くなり(赤っぽくなり)、それ以外の時には悪くなる(緑っぽく)なるのを捉えているイメージです。画像情報を細かく(1秒間に20回程度とされているようです)で取得する必要があり、データが重い、動きに極端に弱い(非常に早いシャッター速度で撮影しながら、前後比較する必要があるため、動いちゃまずい状態です)、理由から、個人的にはまだあまり実用的ではない印象です。鏡での使用とか、UX結構考えないと使用は厳しいのかなと。

 

・光電脈派(PPG)

ドクンドクンの血液の動きで変化する血管の容量(太さ)を、光で検知する方法です。手首や指などから測りますね。血液中のヘモグロビンは緑色の波長の光を吸収しやすいので、ドクン、ドクンで血液の量が多く流れる、つまり血管が太くなると、吸収される光の量が多くなり、それで脈拍がわかります。皮膚に触れる形で、LEDの発光部とフォトトランジスタ等の受光部を配置して、発光部→皮膚→血管→皮膚→受光部と、反射してきた光の量の変化を計測して脈拍を測ります。AppleWatchとかFitbitとか、リストバンド系のウェアラブルバイスはだいたいこの計測方法ですね。バンドの裏側に緑色に光る部分があるはずです。

 

・心弾動図

心臓がドックンと脈動すると、当然振動が生じますね。その振動を加速度センサーで捉えて、脈拍を計測する方法です。BCGとも言われます。なんとなく想像できるような気がしますが、振動といっても、とてつもなく小さいので、高精度な加速度センサーと、ノイズ(人間ですから、筋肉など結構色々な振動がデフォルトで生じてますよね)を除去するアルゴリズムが必要です。心臓近くでの計測がもちろん効果的でしょうが、それだと心電図の方が良いので、座っている状態でお尻から、ベットにつけて背中から、などと生活シーンに溶け込むような形でのセンシングの形態が多いイメージです。椅子などに仕込むと、非接触センサーのように(本当はお尻に接触しているのですが)使用できるため、UXは非常に良きの印象です。ただ本当に他の振動に弱いので、例えば車の移動やエンジンの振動や、人のがキーボードを打つ時の身体振動など、揺れてる?程度のものでも結構厳しいようです。こちらもUX設計はある程度考えないとです。座禅などの動かないサービスでの利用では良きと思います。

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ドップラー効果(音波・電波など)

電波や音波を発信して、その反射をみて脈拍を測る技術ですね。イルカやコウモリが障害物を捉えたりするときに使うやつです。心弾動図と同様で拍動時の小さな動きを取得するようです。同じく動きに弱いです(非接触なぶんこちらの方がより動きに弱いように感じます)。貧乏ゆすり等する人は全く計測できないです。人の動きの取得用に人感センサーとして利用されてきた技術でしたが、近年精度が向上し、睡眠や呼吸、そして心拍まで取得できるようになってきているとのこと。脳波や皮膚電位など、こころの状態を推定できる可能性のある生理指標で唯一非接触計測ができそうな指標が心拍だと個人的には思っております。なのでこのドップラーで心拍を捉える方法は、夢があり大好きです。ノイズ除去アルゴリスムの発展はもちろん必要なのですが、入り口となるハード(センサー)の性能が悪く元データが汚ければどうしようもないので、ハードとソフト両輪での改善が必要ですね。

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◾️心拍から何がわかる?

・活動量

心拍数がわかれば活動量(運動量)が推定できます。

運動すれば心拍が上がるのはなんとなく分かりますよね。なので心拍数から活動量は算出できます。拍数がわかればいいのでそれほどの精度も必要なく(手で手首を触ると脈が測れるくらいなので、割と簡単そうですよね)、リストバンド型のウェアラブルバイスは大抵この機能を持っていますね。

・ストレス/リラックス

心拍の波形を周波数分析することで、ストレスとリラックスが推定できます。

心拍の波形の周期(”心電図”の項目で説明したRRIをイメージしていただければ)は運動などで心臓の動きが早くなると短く、心臓の動きが遅くなると長くなります。心臓のドクンと連動して信号のピークが出るので、そんな感じしますね。ですが実は、運動せずじっとしていても心拍の波形は一定にはならず、基本的に揺らいでいます(例外として薬などで神経機能を抑えると、揺らがなくなります)。これを心拍変動(HRV)と言います。

この変動の原因となっているのが、呼吸周期(3秒から4秒程度の周期、0.15Hz〜0.40Hzの周波数)の刺激信号と、血圧変動周期(約10秒周期、0.05Hz〜0.15Hzの周波数)の刺激信号です。そしてこの2種類の周期信号を心臓に伝達させるのが、交感神経と副交感神経です。

副交感神経は呼吸周期と血圧変動周期の両方の信号を心臓に伝えることができるのですが、交感神経は血圧変動周期の信号しか伝えることができません。その為、交感神経が抑制で副交感神経が緊張の場合、呼吸変動(高周波)も血圧変動(低周波)心臓に伝わり、心拍変動に反映されますが、交感神経が緊張で副交感神経が抑制の場合は、呼吸変動(高周波)は伝達されず、血圧変動信号(低周波)だけが伝達されます。なので、交感神経優位の場合と副交感神経優位の場合を比較すると、想定的に、交感神経優位の場合には低周波成分(LFと呼ばれます。0.05Hzから0.15Hzまでの周波数帯)が、副交感神経優位の場合には高周波成分(こちらはHFです。0.15Hzから0.40Hzまでの周波数帯です)がそれぞれ大きくなるということになります。

このことから、心拍信号をフーリエ変換(自己回帰分析モデルと呼ばれる方法でもできるらしいですが私は分かりません)して周波数分析し、0.15Hz〜0.40Hzの周波数帯と、0.05Hzから0.15Hz帯のピークのどちらが相対的に大きいかを比較すれば(あくまで「想定的に」です。基本人体計測の際には低周波成分の方が大きいので、絶対値比較ではいつも低周波成分が大きくなってしまいます)、交感神経副交感神経のどちらが優位かを特定することができ、人のストレス・リラックスを推定することができます。

ここで交感神経優位=ストレス状態、副交感神経優位=リラックス状態とされているのですが、「ならば副交感神経が絶対正義!」というわけではなく、あくまでバランスです。どちらかが優位すぎてもあまり良い状態ではないということです。

 

・トータルパワー

心拍波形から疲労度を推定することもできます。

トータルパワーは、上述の低周波成分(LF)と高周波成分(HF)さらにLFよりももっと低周波帯の成分(VLFと呼ばれてます。0.04Hz以下の周波数帯です)を合わせた、0.0〜0.4Hz帯のパワースペクトルの合計値です。分かりやすいネーミングですね。このトータルパワーの値が低い場合には疲労気味、となります。パワーが少ないと疲労、またしても分かりやすいですね。この値は加齢に伴い減少します。そのため、世間一般的にみて疲労気味かそうでないかを判断するためには、非計測者の年齢を入力させるUXがないとできないことになります。

 

 

 

ボリュームが多くなりましたが、今回はここまで。

次は心拍を測る巷のデバイスを紹介したいです。

 

 

 

 

 

【読書感想文】コンビニ人間

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コンビニ人間

 

色々な意味でお世話になったある大学の先生が猛烈にオススメしていた本。

彼の意見とは異なる印象だったけれど、確かに読んでみて残るものがある本でした。

 

 

<<感想>>

 

最近amazon primeでドラマの「僕らは奇跡でできている」をみています。

この本を読んだ時、ドラマの中で出てきた、イソップ童話の”ウサギとカメ”の解釈の話を思い出しました。

「カメはなぜ眠っているウサギを無視してゴールしたか?勝負の最中に道で居眠りなんて普通じゃない。もしかしたら怪我か何かで気絶しているかもしれないのに、それを無視してゴールなんてできるかな?」

なぜか?ドラマの中での高橋一生の回答がとても好きです。

「ウサギは、カメを見下す為に走った。自分はすごいと証明する為に。その為に頑張った。でもカメは勝負のことなんて考えていなかった。ただひたすらに純粋に”前に進むことで広がる景色”を楽しんでいただけで、ウサギが寝ていようが勝負に負けようがそもそも興味がなかった。勝負に勝つ為にコツコツ頑張ったりは全くしていなかった。

 

この本は、自分をどこに見つけるか?を問うている本だと思う。

私も、36歳で独りで、コンビニでバイトしている友人をみたら、何か問題があるのか?就職したり結婚したりした方がいいのでは?と質問してしまうような気がする。

 

「暇と退屈の倫理学」の中で、ハイデッガーの環世界の話もこれに近い気がした。

例えば人間と、ダニの見えている世界は全く異なる。ダニは視覚も嗅覚も聴覚もない。獲物の背中に張り付く為に、まずは手頃な高さの枝に張り付き、その下に生体に近い温度の物体が通り過ぎた時に手を離し、背中にひっつく。その後は口を差し込み、吸血。それでおしまい。これが彼の人生で、その中には我々が持ち合わせるような価値観は通用せず、「そんな人生何が楽しいの?」なんて問いは当然お門違い。この世界観を円環になぞらえて”環世界”といい、人間とダニは違う環世界を生きているとのこと。

そしてハイデッガー曰く、人間同士も異なる環世界を生きているとのこと。例えば道端の石を見ると、私はただの石だと、せいぜいが何色で質感がどうこう、程度の認識しかできない。しかし地質学者のような専門家が見れば、この辺りの地層はどうだとか、この石はいつ頃の時代のものなのか、などの全く異なる認識になる。この状況で、私と地質学者の環世界は異なっている。

 

コンビニ人間の彼女も、我々(普通の人でくくってしまっているけれど)と異なる環世界を生きているのだと思う。コンビニに出会って初めてこの世に生まれた感覚になり、コンビニの”声”が聞こえて、コンビニが価値観の全てになっている彼女を、そんな人生でいいのか?と聞くべきではない。

大企業につとめ結婚して家を買い子供を作る、テンプレートな幸せも、世の大多数が幸せと感じることであり、いわば”正解の可能性の高いこと”だと思う。自分のあり方は、自分が決めればいい。

 

ここで、彼女とコンビニの出会いの形は、あまり良くなさそうに書かれている気がする。入りたい企業に、一生懸命努力して入り、優秀な同期と切磋琢磨してやりたかったことを達成する…コンビニが彼女の中で居場所になっていく過程は、そんなサクセスストーリーでもなく、能動的に勝ち取ったものでもないように思う。流されるようにコンビニと出会い、その中で「正しいことでは多分ない」と思いつつも他のスタッフの様子や意見に迎合して溶け込んでいく…どちらかというとネガティブな描写だった。

しかし、それでいいと思う。能動的に自主的に、努力をして勝ち取ったものは当然尊いと思う。でも、それだけが尊いという訳ではない。受動的でネガティブな、逃げ込み先のような場所でも、そこで自分を見つけられるならば、それの何が問題なのか。

社会に馴染めずコンビニに逃げ込み、そのコンビニからも見放されかけても、最後にはそこに自分を見つけることができた、彼女の人生は素敵なのではないかと思う。

 

考えさせられる本でした。

「暇と退屈の倫理学」「僕らは奇跡でできている」「コンビニ人間」と温度感や視点が全く異なるが、同じテーマを扱っているように思うものと最近良く出会う。

心が欲しているのだろうか…?笑

 

【Spotify感想文】コンサルと考える、新しいクリエイティブの考え方

Tacram Cast 感想シリーズです。

最近は晩御飯作りながら聴いてます。

 

デザイン経営など、ビジネスデザイナーも上流?にいくほどにコンサル業になっていくのでは?と個人的にも思っており、タイトルに惹かれて聴いてみました。

 

 

<<まずは感想>>

 

◾️ビジネスデザイナーってコンサル?クリエイティブ?
 
・クリエイティブとは?
 「クリエイティブ」=「人を動かすこと」。確かにクラフトに限定した俗にいう「クラシックなクリエイティブ」のことをクリエイティブというならば、デザインシンキングやコンサルに重複するような領域ではないのだろうけれど、「人を動かすこと」と広くクリエイティブを定義するのであれば、これはやっぱりコンサルと領域が重複するように思う。
 
・コンサルとは?
 「コンサル」=「効率化がメイン」と放送内でも言っていた。工場の生産性をどう工場させるかといったような、こちらも「クラシックな」コンサル領域であると思う。確かにメインはそうなのだろうが、私の知っている限りこの「人を動かすこと」を業務領域として、調査設計から始め事業の方針設計、デザインシンキングの手法などを用いたプロトタイピング〜事業・サービスのコンセプト設計など、「人を動かすこと」を主業務としているコンサルとも多く会ってきた。
 
・とするとビジネスデザイナーは?
 やっぱりおそらく、広義のクリエイティブと広義のコンサルの交わるところに、デザインシンキングやデザイン経営などの「ビジネスデザイナー」のポジションがあるのだと思う。つまりどちらの領域にもいる人、の印象です。
 
 
◾️デザインシンキングって結局、結構属人的?
 
・手法自体は単純だよね
 私は以前、デザインシンキングのプログラムを受けた&実施した経験はある。1回は社内で他事業部のチームメンバーと一緒に学びを目的としたプログラムで、手法を学び、それを用いたプロトタイピング〜サービス開発までを実施するというものだった。もう1回は実際に他社メンバーとともに手法に乗っ取って新規サービス開発を行う、半分クライアントワークのような経験だった。別々の接点から共に半年間ほどの比較的長期での案件で、個人的には割とデザインシンキングの手法を知っていると言えると思う。
 ここで個人的に疑問に思ったのは「これって誰でもできるんじゃないか?」というものだった。平たくいうと、課題仮説を設定してそれを解決するプロトタイプをできる限り迅速に作り、実際のユーザテストを持って検証する。そのために検証するポイントに絞ったプロトを要領よく作る必要はあり、それが人によってはスジが良かったり悪かったり、あとはプロト検証時に思い通りの効果が得られなかった際に、ちゃんとピボットできるかどうかに差があったり、などといった、進め方のセンスが問われるような部分は多々あったが、それだけだという印象だった。もっと神が宿るようなイノベーションが自動的に生まれる手法を最初は期待していたものの、そんなものではなかった。手法はシンプルなので、「その手があったか!」の驚きのアイディアやイノベーションが生まれるかどうかは割と属人的なものの印象だった。
 
・やっぱりファシリテーターが重要
一 流のデザインシンカーはファシリテーションをしているうちに、イノベーションシンキングをしている。デザインシンキングでイノベーションを起こすためには、このイノベーションシンキングができるようなデザインシンカーが、ファシリテーターであることが絶対条件であるとのこと。
 やっぱりそうですよね!結局チーム内に一人、特にリーダーポジションの人が、深い想像力と斬新な発想力を持って議論の方向性をワクワクする方向に導いていかなくちゃいけないよね。やっぱりそうだよね。とするとやっぱり一番早いデザインシンキングの取得方法は、手法を学ぶというよりも、一流のデザインシンカーの隣にいて、その人の思考や行動パターンを学ぶことだね。手法は知識として学び揃える程度で良いか。あとは経験あるのみ。
 
◾️ブランドストーリー万能説??
 
・上流設計やりたいよね
 製品のブランドストーリーが大事ってよく聞きます。”エシカル消費動向の高まり”とか、”Z世代”とか、ことある頃に聞くこのブランドストーリー。個人的には製品を見た時にその背後にあるストーリーで購入を決めるということは一切ない(!)ので、なかなかに理解しにくい内容。結局のところブロダクトやサービスのもつ最終的なデザインやもたらすメリット、と価格で決めるかな。同じスペックだけれどこういうストーリーがあるから少々お値段高めです、という製品は買わないなぁ。
 なので消費者としてはブランドストーリーに関心がないのだけれど、仕事としてはそこに入りたい!と思っています。結局クライアントワークでも、そこの根っこを掴んでしまえば、その下流の製品やサービスの”キメ”の部分も決められる立場となる可能性は高いし、諸々のシーンで説明や説得をする際にも、方向性を絞りやすい。消費者としては意識しないけれど、仕事としてはそこから入りたいという、結構矛盾してしまっているな。。
 
・ストーリーとキメ、どちらも大切
 放送内でも言っていた、「でも顧客は結局、体験で買う」というのはまさにその通りと思う。ストーリーはあくまで、ほぼ購入が決定している状態を少しだけ後押しする役割に過ぎないと思う。ただ、それが大切なんだと言われればそうなんだと思う。
 ストーリーとキメ(プロダクトデザインやサービスデザイン、UI/UX設計のパート)は”出汁と調理”の関係とのこと。出汁がなければ深さや最後の満足感をどこか感じないし、調理がなければそもそも成り立たないし、そもそも失敗していたら出汁どころの話ではなく台無しになる。これは確かに、割と納得。結局のところ、どちらも大切であることは間違いない。ただストーリーを決めると全能感があるけれど、結局調理がなければ何もできない仕事なので、あまり大きな顔しないようにしなくちゃね。
 
 

<<それでどうする?>>

 

・キメポジションも一回やってみたい!
 製品のキメの制作ポジション(エクゼキューター)になったことがないので、一回挑戦して見たい。直近でのUI/UX設計ポジションに入ってみよ!
 
・しっかりデザインシンカーになれるように勉強しよう
 今の「実績はあるけれど、ややデザインシンカーと名乗るには不安」な状態は少し勿体無い。一旦知識としての概要のおさらいと、あとは実践を積んで、ちゃんとデザインシンカーですと名乗れる状態には持っていきたい。上記のキメポジションの時も、技術者のメンバーと一緒にデザインシンキングの手法を用いて設計していこう。あとは師匠がいれば理想なのだけれど、これちょっと難しいな、誰かいないかな。。笑

巷の脳波計測デバイス(Emotiv社)

 

安い!オシャレ!高性能!

元々研究やマーケティング用の脳波デバイスは、医療機器ではないものでも百万円を超えるものが一般的でした。「なんでこんなに高いの?」と思いながらも渋々受け入れていたユーザー群に、十万円程度の価格帯で、価格破壊の風(しかもデザインもいい!)を吹き込みました。

Emotiv社の提供する脳波計を、一部紹介します。

 

注意:本当に私の独断と偏見でコメントしております。間違いや「こいつわかってないなぁ」などありましたら、それはすみません!

 

 

Epoc + https://www.emotiv.com/epoc/

基本SPEC

◾️金額:$699

◾️電極数:16個(チャネル14個+リファレンス2個)

◾️電極タイプ:ウェット(生理食塩水)

◾️駆動時間:〜12時間

◾️その他センサ:9軸角速度・3軸加速度・3軸コンパス

◾️通信:BLE

◾️計測箇所: AF3, F7, F3, FC5, T7, P7, O1, O2, P8, T8, FC6, F4, F8, AF4

◾️サンプリングレート:2048Hz

◾️検出域:0.16 – 43Hz

感想:高信頼性の研究/マーケティング用途デバイス

研究などでも使用される信頼性の高いモデル。Emotiv社はウェアラブルバイスとしての脳波計も作っているけれど、キャップ型のガチの脳波計も作ってる企業。なのでそのデバイスの信頼性は高い。このモデルも生理食塩水を使用してインピーダンスを下げるウェット型で、電極位置もバランスよく、9軸加速度で首の動きを検出できる(そこからノイズの発生タイミングを特定できるし、生理情報として使用することもできる)、器用で色々なことが高精度でできる。主にニューロマーケティングの企業で使用されているが、たまに大学の研究とかでも見る印象がある。電極数も多いし、ウェット型のため、研究用としては必須?のERPも取れる。

でも個人的には、研究用のキャップ型で超多電極のガチの脳波計を、少しだけ簡便にしたものという印象で、研究やマーケティング時の被験者の負担を少しだけ減らすものにしか過ぎないように思う(しかも電極数とインピーダンスから、計測精度を多少は犠牲にしている)。ただ、最大の特徴はこの安価な点だと思う。研究用の日本製の脳波計と比較すると、値段は破格の1/10程度。そういう意味では非常に優れた脳波計だと思う。立ち位置としては、超コストメリットがあり、若干使いやすい実験用の脳波計といったところかな。

あとリファレンスの位置が頭頂だから、頭頂付近の計測電極の信号には影響しそうな気がする(信号が小さくなる)。頭頂付近の信号は結構意味的に大事だったりもするので、やっぱりリファレンスは耳たぶあたりの計測部位から離れたところからとった方が良いのではと個人的には思います。

 

INSIGHThttps://www.emotiv.com/insight/

基本SPEC

◾️金額:$299

◾️電極数:7個(チャネル5個+リファレンス2個)

◾️電極タイプ:ドライ(厳密にはセミドライ?先端を湿らせておくもの)

◾️駆動時間:〜9時間

◾️その他センサ:3軸加速度・3軸角速度(ジャイロ)・3軸コンパス

◾️通信:BLE

◾️計測箇所:AF3, AF4, T7, T8, Pz

◾️サンプリングレート:128Hz

◾️検出域:0.5 – 43Hz

感想:ウェアラブルらしいデザインも、中途半端?

この脳波計は個人的には結構謎なポジション。研究用として使うには、電極位置も固定で数も少なく、心もとない。一方でウェアラブルとして使用するにはゴツすぎるような気がする。公式WEBサイトでは、このINSIGHTを装着して車を運転したり外で読書したりと、ウェアラブルバイスとして普段使いしているような写真があるのだが、正直「それは無理があるだろ。。」と思う。やるならウェアラブルに振り切ってもっと電極数も少なく、本当に目立たない形状にすべきかと。

ただ、このレベルまで簡易であれば(ウェットでもないし)、一般参加型の実験ができるはず。例えばコーヒーのサンプリングのシーンで、イベントブースを設置してそこで一般消費者にコーヒーを飲んでもらい、その時の脳波を計測するといったような、「体験型キャンペーン(サンプリング)」のようなことには使用できる可能性は高い。

感情等の高位情報の取得が可能で、かつウェアラブルとして簡易装着と長時間装着に耐えうる設計として、ギリギリのところを攻めた機構なのだと思う。

電極の接触部分は髪をかき分けられるような櫛形の設計になっていて、またセミドライ式でもあり、インピーダンスを下げる工夫はよく見て取れる。他のクラウドファンディングでポッと出てくるようなウェアラブル脳波計とは一味違う、強い脳波計メーカーならではの細部のこだわりは見て取れる設計なのかなと思います。左の乳様突起あたり(左耳の裏あたり)にリファレンスがあるので、他の脳波信号の強弱にあまり影響しなさそうで良いかと。

 

MN8 https://www.emotiv.com/workplace-wellness-safety-and-productivity-mn8/

f:id:POROROCA:20200814141540j:plain

Emotiv社サイト(https://www.emotiv.com/workplace-wellness-safety-and-productivity-mn8/attachment/fb-mn8/) より引用

基本SPEC

◾️金額:$??

◾️電極数:2個(チャネル1個?+リファレンス1個?)

◾️電極タイプ:ドライ

◾️駆動時間:〜6時間

◾️その他センサ:モーションセンサ(詳細不明)

◾️通信:BLE

◾️計測箇所:T7 or T8 ??

◾️サンプリングレート:??

◾️検出域:??

感想:ライトに振り切った機構!

これは製品版ができているのかどうか、私の調べる限りでは分からない(2020.5.20時点)。2019年9月にCG画像が公開され、今はエンターブライズ版として購入が可能なようだが、予約購入なのか、それとも製品保証ができていない段階のものなのか、とにかく他の2つとは異なり、WEBサイト上でコンシューマ向けに販売しているものではない。

機構としては、個人的には非常に良いと思っている。ウェアラブル脳波計ならば機能を多少犠牲にしてもこのくらい振り切ったモノにすべきと思う。イヤホンオーディオとマイク機能がある為、日常生活で使用しながら脳波の計測ができる。

ただ、リファレンスも含めて2チャネルの電極数のよう(?)なので、右か左のどちらかからしか信号が取れない模様。さらに脳波の取得部位が、この形状だと乳様突起上かつ外耳に接している部分(フック型のイヤホンの耳にかかる部分)で、この部分からの脳波信号はかなり微弱なはず(ただでさえ信号が弱い側頭部よりもさらに下側なので)。表情筋も通っている箇所で筋電の影響もあるし、検出したい信号のパワーが弱いのでノイズにとても気をつけなくてはいけなくなる。閉眼開眼試験で閉眼時のα波(基礎律動)も計測できないような気がする。WEBサイトには独自のアルゴリズムで集中とストレスが検出できると記載されているけれど、基礎律動も取れないとすると結構厳しいのではと思う。

正直欲しい。使ってみて、生データをみてみたい。

【Spotify感想文】『イノベーション・スキルセット』対談シリーズ1:尾原和啓さん(後半)

Tacram Cast 感想シリーズです。

お風呂で聴くのにちょうどいい長さですね。

 

本の「イノベーション・スキルセット」を読んだので、解説シリーズも聴いてみました。

前回の”前半”に引き続き、後半です。

 

 

<<まずは感想>>

 

◾️どうやって自分の領域を拡大していくか

結局自分の領域を広げる(越境する)といっても、一つの領域をどこまでやったら次にいくのか、分かりにくい。筆者の考えは、「太い幹を8割で持ってて、残り2割で越境すること」。個人的には意外で、思ったよりも太い幹の部分が多いなという印象だった。それだと、太い幹の方が当然エクゼキューターなのだろうけれど、残り2割の部分は結構ずっとリテラシーレベルになるんじゃないかな?(個人的には太い幹6割、残り4割の印象でした)BTCのバランスが、かなり自身の領域に偏った感じになるように思った。
 
◾️クリエイティブプロフェッショナルのセンス?
 
 
プロフェッショナルってどうなったらプロフェッショナルなの?
これは結局明確な指標なんてないのだろうと思いつつも、気になりますね。これは「クリエイティブ制作の際に、クリエーターと解像度を合わせて、言語化してコミュニケーションできること」だと。これ抜きで一言に”センス”というとプロと素人、正直に大差はない。とのこと。この部分はクリエーターは皆、神秘化したがるけれども、意外とそんな感じです。とのこと。う〜〜〜ん、なるほど。笑
でもそうすると、ベシャリが得意な人が少々場数を踏めば簡単にプロフェッショナルになれてしまうのでは?と思う。が、そんなものなのかな?確かにセンスは勉強しようとしなくても自然に勉強できてしまうものに思う。技術と違ってね。国語と数学に似てるよね。国語は勉強しなくても日々触れるものだけれど、数学は違う、だから数学は人によって絶望的な差がつくけれど、国語はそうでもない。
確かに結局クライアントワークをしているとジャッジするのはクライアントになる可能性が高く、そうするとクリエーターのセンスって、案外、コミュ力に纏まってしまうものなのかな?(ゴリゴリのエクゼキューターはのぞくけれど)。
まぁ「怖がらずにクリエイティブ領域にもどんどん出て行きましょう」ということですよね!
 
◾️プロデューサーの役割とは
「プロデューサーは、思い思いの正義、愛をマネジメントする仕事」
これはとてもよく分かります。。皆揉めるんだよね。厄介なのは皆それぞれ一理あることを言うんだよね。そうすると本当に、どう纏めるかが大変。ビジネスや技術は正解・不正解がロジカルに分かりやすいので(リスクをどう見るかとかで私見が入ることは多々あるけれどそれは置いておいて)、纏めやすいのだけれど、クリエイティブは一人一人のエゴが割と正しい形で入ってくるから、本当に大変。究極、好みになるし、間違いがないから、どっちでもいいといえばどっちでもいい状態になってしまう(こんなこというと怒られそうだな)。
 
「クリエイティブ領域のエクゼキューターに憧れる」
これも分かります。。私はクリエイティブ領域では、今はプロデューサーポジションです。ディレクターにいけるか?の瀬戸際を行ったり来たりしている状態と個人的には理解中。自分で手を動かせるって、やっぱりかっこいい。フリーで動けるのは、最上流の営業ができるヤツ(クライアントワークの場合)or始めるヤツ(自分の仕事の場合)か、最下流の手を動かせるヤツ。この間のプロデューサー(始めるヤツになれれば最上流)・ディレクターらの”中間管理職”は、一人では生きていけない。両サイドと何かしらのすり合わせをしながらモノを作っていかねばならない、弱いポジションだと思ってる(完全に私見です)。私は会社からお金をもらって何かを”始めるヤツ”になるポジションに身を置こうと思って、今新規事業開発の仕事を行なっている、プロデューサーポジション。プロデューサーポジションだと、確かに技術・クリエーター・営業…全ての人種と話すし、全てに口出しできる(自分の事業だしね)。めちゃめちゃ良いポジションだと思いつつも、一方で「自分、手に職ないなぁ」とも思う。やりたいだけやってしまえば良いとも思うけれど、エクゼキューターになると時間ものすごく取られるんだよなぁ。今のところ、そこに踏み込むのは難しいなぁ。
 
◾️どうすればお二人みたいになれますか?
「小さくても良いから、全部自分でやること。そしてそのプロジェクトが、今後急成長する市場・領域のモノであるとベター!」とのこと。これは良い感じ。しっかり選んだから当然といえばそうなのだけれど、今のところこの条件は揃えているプロジェクトにプロデューサーとして全部観れるポジションで携われている。やっぱり今の仕事、しっかりやっていこう。ちょっと元気でました!笑
 

 

<<それでどうする?>>

 

・今の仕事、本当にしっかりやろう!
お話を聞く限りでは、今の自分の仕事のポジションも内容もサイズ感も、割と良い感じ。本当に恵まれている。しっかり進めて行こう。特に技術の方は職人かたぎの人が多いし、ビジネスの部分も協力会社の収益や契約云々の話もあり、なんだか「まぁそれでも良いか」と妥協する部分が少なからずあった気がする。しっかり細部までこだわりを持って、世に出して恥ずかしくなようなプロジェクトに仕上げて行こう。手綱をしっかり握らないと、せっかく恵まれた環境でプロデューサーをやらしてもらってる意味がない。
 
・UI/UXのディレクターに挑戦してみよう。
またしても今の仕事の話になるが、ちょうどアプリ開発もあるので、UI/UXのディレクターとして振舞ってみよう。エクゼキューターとなるエンジニア&デザイナーについていけるように、しっかり勉強して、挑戦してみる。
 
 

【Spotify感想文】『イノベーション・スキルセット』対談シリーズ1:尾原和啓さん(前半)

Tacram Cast 感想シリーズです。

30分くらいで終わるのがちょうどいい時間ですね。

 

本の「イノベーション・スキルセット」を読んだので、解説シリーズも聴いてみました。

 

 

<<まずは感想>>

 

◾️アフターデジタルでIT領域には無限の可能性!

 

市場の98%はまだIT活躍の余地あり。

GAFAが有名だけれど、世界の市場における”IT”の市場規模は、1.6%だけ。残りの98%は非ITの売上。つまりこれからITがどんどん我々の生活溶け込んでくる中で、98%の市場が残っており、IT屋さんのソリューション提供範囲が、今後はどんどん広くなる!とのお話。

 

 その為、やろうと思えば、バリュージャーニーの全てを見れる!入り口から出口まで全てのコントロールができる!それはそうかも。夢が広がります。今後の未来が面白くなってきそうでワクワクします。

 

◾️ますます大切になる”ポジション”

 

 でもその時はポジションが大事だなと。技術屋でもクリエイターでも専門分野にかかわらず、プロデューサークラスのポジションになれないと、その”全てを動かしている楽しさ”を感じることは難しいはず。そもそもBTC人材は上流工程で強さを発揮する人材で、やることに専門性が入ってくる中流下流の工程では当然専門性に特化した人材の方が向いているはず。本を読んだ時にも感じたことでした。

ホリエモンが経営者たれとよく言っているけれど、そういうことだよね。この話もそうだけれど、この楽しさを享受するためには、自分のプロジェクトを持つ必要があるね。

 

 どんなポジションがいいのか?エクゼキューター・ディレクター・プロデューサー?

日本はエグゼキューターが評価され、ディレクター・プロデューサーポジションがあまり評価されていない、というのも印象的でした。

確かに。「手動かせないと半人前」感はあるね。クリエイティブだと、クラシックのクリエイティブ領域で手を動かせないと、エセ感あるよね。美大出ならデザイナー、一般大出でならコピーライターしか選択肢ないかなぁ。プランナーはクラシックではクリエイティブワークに入らないような印象はある。

エンジニアもそう。文系でIT系領域に入ってくると、割と長い間、「彼は文系でコード書けないから…」なんて言われるよね。笑

 

 

<<それでどうする?>>

・基本、プロデューサーポジション狙って色々経験してみよう。

 IT領域かどうかはあまり意識しなくてもいいかな。むしろよほどクラシックなものづくり系の話でない限り、IT領域ではないサービス・事業開発を探すことの方が難しいからね。今の事業をしっかり推進することも忘れないようにしよう。

 

・今の事業開発でもポジションを意識しよう。

自分はこの領域において、どんなポジションなのか、自分の能力やチームメンバーの持ち物も加味して、この領域で今自分はどのポジションで、新しく学ぶためにはどんなアクションをすべきか、考えながら取り組んでみよう。幸い今は事業開発の推進隊長(プロデューサーポジション)になれているから、自分次第で如何様にも踏み込めそう。一先ずアプリのUI / UX設計にディレクターポジションでがっつり入っていきたい。

 

・”後半”も見てみます!

 

 

【読書感想文】暇と退屈の倫理学

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暇と退屈の倫理学

 

 

私は割と良い大学を出て、割と大きめで安泰の企業に就職しました。

20代後半で結婚して、マイホームも建てました。

まさに生命保険のパンフレットに出てきそうな、THE・テンプレの人生!

幸せではあります、が、何か満たされていないような、

何だか”世間の言う幸せ”に流されているような、そんな気持ちがしておりました。

 

 

そんなことを上司に相談した時に、お借りした本がこちら

”暇と退屈の倫理学

 

本当に良い上司!職場環境にも大いに恵まれております。

早速読んで見ました!(実は内容がタフで、読破にものすごく時間がかかりました)

(しかもまとめるのにもその倍時間かかったぜ!超難解ィ!)

 

  

<<<まずは感想!>>>

 

 

お気持ち、わかります。

 

筆者の実経験で出てきた様々な人々。

・スポーツバーで、サッカーチームの応援に熱狂している男性。

 しかし応援に熱狂しているのではなく、熱狂している自分を見て欲しい様子。

 少し前に、女性誌の表紙のコピー「幸せそうって思われたい」が物議を醸していた。

 個人的にも、自分の無い哀れな感性だと正直に思ったし、今もそう思う。

 しかしながらその一方で、気持ちは分からなくも無いとも思う。

 

・進路面談で、自分が何を望んでいるのか分からない女性。

 ただ何かを与えられたい、動き出して欲しい。

 偶然の出会いのような、素敵な何かが自分の人生に起こるのを待つ感覚。

 でもそれが何かは分からないから、自分からは積極的に動けない。

 何か面白いことが起こってくれないかな、と常に考えている。

 気持ちは痛いほどよくわかる。

 何かが起こって、この漫然とした退屈から救い出してくれるのを待っている感覚。

 

満たされない気持ちを抱えつつも、自分がここにいることを誰かに見て欲しい、

 認めて欲しい。そんな感覚を持った中年男性。

 自分で自分の気持ちに区切りをつけて、納得して、

 世の中のニーズに合わせて生きていることに一方では満足し納得しつつも、

 もう一方では「もっとやれる・もっとこうしたかった」と思っている。

 これでいいんだよね、と納得しつつも、どこか違和感のある感覚。

 この気持ちも、切ないくらいよくわかります。。

 

 

”好きなこと”と”退屈”

 

・本当に好きなことってある?

 この問答は就活時から月一で聞き続けている気がするな。

 個人的に寝ることは大好きだけれど、そういった三大欲求系は一旦置いておいて。

 自分にとって本当に好きなことってあるのだろうか。

 好きなことに狂信的な人のことを羨ましいと思う気持ちはある。

 宗教もそう、アイドルの追っかけやスポーツなどもそう。

 そこまで熱中できること、真剣に打ち込めること(=好きなこと)がある人生は、

 幸せだと思うし、それがある人は、きっと退屈してはいない。

 

・その”好き”は自分の意志か?

 仕事は好きだ。でも一生懸命に働くのは何のため?

 休日をゆっくり過ごすため?それとも自己顕示欲や達成感?

 自分の好きな仕事をやっていると自分でも思っているし、

 周囲から評価されることも嬉しい。

 でもその楽しさは、どこからくるもの?一人で、誰にも評価されなくてもやるかな?

 世間一般がいう”成功”に囚われたものじゃないか?

 本当に好きなことなのかな。

 

 

結局全ての行動は暇つぶし?

 

・兎が欲しいのか?狩りをしたいのか? byパスカル

 兎狩りをする人に、兎を渡しても喜ばれない。「そういうことじゃない」と。

 彼らは狩るという行為をしたい。

「退屈という不幸な状態から自分たちの思いをそらし、気を紛らわしてくれる騒ぎ」

 彼らは欲している。

 パチンコもそう。やる前に月次平均結果としてお金をもらっても嬉しくないのだ。

 (月次平均だとむしろ払わないといけないか!ますます最悪。)

 う〜ん、これもわかるかもしれない。

 仕事も確かにお金を得るための手段だけれど、

 仕事を全くせずに給料だけをもらっても、嬉しくはない(いや、、嬉しいか?)

 つまり欲望の原因(退屈から逃げたい)と欲望の対象(兎を得たい)が

 異なっている、ビジネスなら非効率な、ただの”暇つぶし”ということ。

 

 それはわかる。人生は究極的に長い暇つぶしと個人的にも思う。

 またこの状況に対して、本書に記載があったコメントが心に響く。

「欲望の原因と欲望の対象を取り違えてるな、と指摘する人が、もっとも愚か。」

 金魚すくいを楽しんでいる人に、「いや金魚買えよw」という人がもっとも愚かと。

 これは”他人を指摘することで自尊心を満たす”という、

 同じく欲望の原因と対象を取り違えた、暇つぶしであると。

 自分が囚われていることに気づかず囚われを笑う愚かなヤツだと。

 なるほどね〜〜確かに。

 

 

そもそもDNA的にも原因ある?(歴史を紐解く)

 

・そんな昔から?農耕の始まり(1万年前)あたりからの異変

 我々は元々は遊牧民生活。

 今は定住生活だが、それは望んでというよりも止むを得ずであった。

 動くのは危険だし、さらに農作をする上では定住をせざるを得なかった。

 そうすると遊牧民生活に適していた索敵能力などの人のもつ優れた能力を持て余す

 そして暇になる。とのこと。

 みんなが旅が好きなのはそういうこと?

 

・生き方のモデルケースが提示されるようになってきた

 かつてのフォードが、こう生きよ(よく働き、週末は車に乗ってよく遊べ)の

 モデルケースを作った。

 それに人々は魅了されて、それが正解だと思うようになった。

 そこでガルブレイズは「自分の欲しいものが何であるか広告屋に教えてもらう必要の

 ある人は19世紀のはじめにはいなかっただろう。」と。

 今、消費者の欲しいものは、供給者が決めている。

 デザイン・機能・システム・・・我々は自分で選んでいるようで、

 ガルブレイスの言う通り、

 周りが良いと言っているものを勧められるままに購入しているかもしれない。

 人生観も、周りの幸せのロールモデルに沿っていて、だからこそ軋轢を感じて、

 そこに退屈を感じてしまうのかもしれない。

 私の人生の不安感と何となく似ていて、共感できるなぁ。

 

 

それで退屈を和らげてくれるものは何?

 

・消費ではなく浪費

 消費と浪費の違い、わかりますか?

 消費する対象はものではなく、付与される観念や意味。有名な店で食べた、など。

 浪費する対象はもの。美味しいものを食べた、など。

 携帯を最新のものに変えた。消費は最新のものを持っているという事実に満足する。

 携帯を最新のものに変えた。浪費は最新の携帯電話そのものに満足する。

 

 消費は止まらない。有名な店は次々出てくる。終わらない。

 浪費は終わる。美味しいものを美味しいと感じられるキャパは有限。

 

・ポジティブでもネガティブでも、刺激は退屈よりまし

 「ファイト・クラブ」という映画のストーリー。

 充実していながらも変化のない毎日を送っている主人公が、

 日々移動に利用する飛行機がいつか事故を起こしてくれるのを願う。

 ネガティブでもポジティブでも関係なく、何か刺激を起こして欲しい、

 それに巻き込まれて、この退屈から突然連れ去られたい。

 気持ちは分からんでもない。 

 

・貴族の生活に学ぶ

 昔の貴族は、自分は動かずに周りに多くのことをやらせることがステータスだった。

 服を着せてもらったり、紅茶を入れてもらったりね。

 つまり、”どれだけ暇である事”がステータス。

 その為、「彼らは暇を楽しむ能力に長けていた」とのこと。

 彼らは何でもない植物を愛でて、四季の移り変わりや絵画を楽しんだ。

 確かにそれらの、俗に言う”高尚な感覚・趣味”は余裕がないとできないよね。

 それにアート的な感覚は確かに貴族っぽい人の方がありそう。

 

 

そもそも退屈ってなに?

 

 ハイデッガー曰く、退屈は3つの形式に分けられる。

 ・退屈の第一形式(俗に言う”退屈”):

  やりたいこと・やるべきことがあるのに、それが阻止されている状態。

  これは新幹線で移動中に、スマホの充電が切れてやることない、ような状態。

  分かりやすいね。

 

 ・退屈の第二形式(ちょっと複雑な、今風の”退屈”):

  世間一般的に楽しいと言われることをしてはいるものの、

  心から楽しめていない状態。

  周囲に合わせて自分がなくなる、空虚になる状態。流されている感覚。

  祝いの席でお酒や会話を大人数で楽しんでいる。会話そのものは楽しいし、

  相手も悪くない。しかしながらふと感じる、なんとなくの退屈。

  これは想定の範囲内のことしか起こっていない予定調和な状態、

  そして世間では楽しいと思われていて、楽しいはずだと自分でも思っている状態、

  と個人的には思う。

 

 ・退屈の第三形式(根源的で最強の”退屈”):

  なんとなく退屈、な状態。

  自分には多くの可能性があり、自由に様々なことができる、状態にあるものの、

  それを試すことなく安定した場所からそれを眺めている状態。

  これはすごくよくわかる気がする。

  何かができる気がするけれど、何も初めたくないような、今の居心地の良さから

  出たくないような、でも何かやらなくちゃいけないような気がするけど・・・

  のような無限ループのねっとり鬱々とした感覚が、この状態に近い気がする。

 

  人は常に、この第一・第二・第三形式の退屈のどこかにいる。

  第三形式にいる人は(私もイマココ)、

  狂信的な宗教家やストイックなアスリートなどの人々を、”羨ましい”と思う。

  それほど熱中してエネルギーを割くものを見つけており羨ましいと。

  人はこの第三形式の退屈の声から逃げるために、

  使命感ややるべきことを決めて、それを実行する。

  おぉ、そんな気がします。

 

  そして何かに熱中し始めると、それを阻止する第一形式の退屈を感じてしまう。

  私たちは第一→第三→第一と常に行き来している。

  つまり無限ループ。我々はこの退屈のループから逃れるすべを持ちません。絶望!

 

 

結局この退屈から抜け出すために、どうする?

 

・決断すること。

 シンプルに、決めればいい。君は自由だ。

 ここで大事なのは、何かをやれ、始めろと言っているわけではないということ。

 やらないということを選んでもいい。とにかく、決断することが大事。

 何かのミッションの奴隷となることで安寧を得る(退屈から脱出する!)

 資格を取る、昇進する、何でもいい。それで第一の退屈へ。それもありかな。

 

・楽しむためには訓練をすること。

 それは本当にそう。

 普段の生活も、香り・雰囲気・音・風・・・楽しめる要素は無限にある。

 甘えるな!感性を磨け!己の豊かさのために!

 

 

<<<読んでどうする?>>>

 

自分の状況を知ることで落ち着いた感がある

 本誌は退屈の解消法を教えてくれるというよりも、

 退屈とは何かを教えてくれる本だったように思う。

 人間は分からないものに対して不安に思うので、退屈とは何かを理解して、

 自分がどの状態にいるのかメタ認知できた今の状態は、

 本を読む前と比べても、より安定している状態な感覚がある。

 

今後やる予定のこと

 

・決めていこう!

「何となくダラダラしたな〜」ではなく、

 ダラダラするならダラダラする!と決めてやろう。

 とにかく決断して、物事をすすめていく癖をつけよう。

 

・楽しむ為に勉強しよう!

 様々なものを楽しめるように、好奇心を持っていろんな知識を身につけていこう。

 センス磨きや引き出しを増やすことにも繋がりそうだし、歴史・装飾・文化など、

 様々なことを身につけていこうと思いました。

 

 

 

”暇と退屈の倫理学

読むのにも纏めるのにも、本当に時間がかかりました。

しかしその分残るものがある本でした。貸してくださった上司に感謝。

 

 

 

 

【読書感想文】イノベーション・スキルセット 世界が求めるBTC人材とその手引き

 

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BTC人材とは!?

 →Business/Technology/Creativeを知る、イノベーションを加速させる人材。

 

それは憧れる!!

読んでみました。

 

 

<<<まずは感想!>>>

 

BTC人材×大企業、相性悪い…?

このBTC人材は、大企業が自社内で事業開発をする上では厳し目なのでは…?

という印象でした。

大企業では、自社内のビジネス・テクノロジー・クリエイティブの分かる

専門部隊がいて、それらを束ねるポジションがもっともこのBTC人材の

ポテンシャルを発揮できるのだと思う。

つまり事業の推進隊長ポジション(結構トップより)だと思う。

 

そうじゃないと、皆の意見を聞いて上手く調整するだけの立ち位置になってしまう。

(まぁその人材価値も割と高そうだけど)

 

とすると、大企業でこのポジションになれるのは、結構おじさんになってから?

 

 

それに、筆者のいるTakramやIDEOのような、クライアントワークを行う

デザインコンサルティングファームであれば、

短期の間にいくつかプロジェクトを回すことができるのだろうが、

大企業で”メーカー側として”やる場合には、

立ち上げた後の面倒も当然に見る必要があるので、やれる回数は少なくなる。

 

大企業内でも、立ち上げ部隊と実行部隊が分かれていれば良いのだけれど、

そんなは企業見たことない。

(”形式上は”そうなっている企業は何社かみたことあるけれど)

渡す方の熱い温度感や使命感を、渡された方にうまく伝達することはできないよね。

それに事業推進者としては、渡したくない!と思うのが普通なのでは。

 

とすると、

40代くらいから事業推進隊長になれて、

1プロジェクトに最低でも5年程度かかるとすると、人生で1−2回?

1−2回の実績でBTC人材です!といえるのだろうか?(しかもその頃には何歳だ?)

 

 

 

大企業の新規事業部門って…ヤバいのかな??

本書ではBTC人材としてのキャリアを磨く上でオススメの方法として、

できるだけアーリーステージのスタートアップへの参画もしくは起業を推奨していた。

私は大企業の新規事業開発部門にいる。Bが専門領域のタイプなのだと思う。

 

今の会社では、私は31歳とまだ若手(もう中堅かな?)ながら、

事業推進者として振る舞うことを許してもらっている。

しかしながらこの5年間、ビジネスを立ち上げた経験はなく、

今年こそ!と毎年思っている。

正直、焦っている(しかし今年は本当に、今年こそ。と思ってる)。

本書の中でも、大企業の新規事業部門に5年間いて事業立ち上げ経験がない人の

コメントが紹介されていた。

(ただ彼/彼女は「バッターボックスに立たせてもらえない」とのことだったが、

 私はおそらくバッターボックスには立たせてもらってる。事情は違うか。)

大企業での新規事業って上手くいかないのか…?

 

いや、そんなことはない…!!

個人的には、大企業内でイノベーションを起こすことをしたい。

仕事内容的にも多くのベンチャー企業の方々と話してきているけれど、

なんだかんだ大企業内での環境は恵まれていて、資金もリソースも潤沢。

方向性があっているならば、こちらの方が良い、という印象(今のところは)。

皆でスクラムを組んで大きなことを成し遂げる、その感覚も性に合っている。

 

新規事業を立ち上げる場合、なんとなく、

ビジネス知識だけ、ではなく、テクノロジーかクリエイティブのどちらかは結局

知っている必要があると思う。

私の場合は、専門分野であるテック知識がきっかけだった。

そこに、事業計画立案の上で、必要になるビジネス知識が必然的に関わり、

使用者との接点設計(UXデザイン)でクリエイティブ知識が今、必要になっている。

なので新規事業を一つ立ち上げれば、基本はBTC人材になれるのかな、

というかならざるを得ないのかな、と感じた。

結局、メーカー企業で新規事業を立ち上げるということは、

打ち込み度合はむ起業と同程度のはずだ。

一つをしっかりやり遂げるのは大きな経験になる。

 

本書にも書いてあった、マーケティング/商品企画を担当したのちに、

サービスデザインを学び、BTC人材となっていく、キャリアパスはとても自然。

ただ私の場合は、いきなり事業開発部門なので、サービスデザインを最初から

やっている形になるのかな。

マーケティングや商品企画は当然、事業開発の中に入ってくる要素だから、

結局、それぞれの要素は薄く広く経験していることにはなっているのか。

これを”薄い”と捉えるかは自分次第か。

 

結局自分がどれだけ一生懸命やったか次第だ。

 

どんなキャリアパスを描いてBTC人材になる?

最初はBTCの中のどれか一つに自身の得意領域があって、

そこから越境して得意領域を広げていく、のがキャリアプラン

これはそれほど違和感はないのでは。

よくある、エンジニアのI型人材→T型人材へのキャリアプランと基本同じ。

そして事業の立ち上げを推進者として実施すれば、自ずと全要素付いてくるもの!

と、上述の通り個人的には理解しているつもり。

 

ただ効率よくこの、BTC領域を越境できる人材を育成するのには、

けっこう教育環境が整っている必要があるのではないかと思う。

本書にもあったTakramのプロジェクトアサインルールに始まる教育制度は素晴らしい。

そんなのができている企業はなかなかないのでは?

やろうとすれば結局、どこでもできるといえばそうな気もするけれど、

組織の協力と理解のあるTakramのシステムは、正直羨ましい。

 

新しい領域へ移行するタイミングっていつ?

当然の疑問な気がする。

越境するっていったって、今の自分の得意領域でさえ、

周りには自分より詳しい奴がたくさんいる。

「この領域でさえ1人前になっていないのに、他のことやってる暇ある?」

なんて聞こえてきそう。

 

本書内の「”リテラシーから始める”くらいの気持ちでいい。」は響いた。

その通りかも。やってみればいいじゃない、と思った。

最近読んだ ”10年後の仕事図鑑”の中で、ホリエモンも言ってた。

「複合的な得意領域をもつ(〇〇も詳しいし、〇〇も知ってる)ことで、

 希少性の高い人材になれる。深い知識が必要なら、専門家に頼ればいい」って。

このBTCの考え方も、同じことを言っていると思う。

専門家チームを率いるプロデューサーになることを想定した話だと思う。

 

越境すると失敗するの怖いよね…でも!

本書で紹介されている、

学習の4つのA(ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるか)の「Awkwardnessで止まってしまう人」の話は響いた…

他の領域にチャレンジする。

そうすると必ず、少し失敗したり、周りについていけなかったりする。

そうなると人は、もっともらしい理由をつけて撤退したがる。

まさに今の自分!といった感じ。めげずに頑張ります!

 

 

<<<読んでどうする?>>>

 

今の自分の状況に照らし合わせてみた

・私は、アイディアマンであることには自信がある。

 そこにマーケティングを重ね、説得力のアイディアに昇華させる能力をつけたい。

 そうすれば強いヴィジョンを示し、皆を牽引するリーダーになっていける気がする。

・私は、現段階で、

  ・ビジネスのリテラシーがある。

  ・(本事業に関連した)テクノロジーがわかる。

 そして、今推進している事業の立ち上げを通して、

  ・ビジネスがわかる(実施実績をもつ)

  ・(本事業に関連した)テクノロジーがわかる。

  ・UI/UXのクリエイティブがわかる。

 ようになり、BTC人材に近づいていくのだ!

 

今後やる予定のこと

・ビジネスデザイナーをいっそもう、名乗ってしまおう。

 名刺にも書いてしまおう。そうすれば意識するし、そう振る舞える。

 「なんですかこれ?」って聞かれたらガンガン答えてしまおう。もう。

・本書内でオススメされていた、”SHIFT:イノベーションの作法”を読んでみよう。

・(SHIFTを読んだ後で)グロービスのデザイン教育講座ものぞいてみようかな。

・結局、デザインってものすごく広い意味をもつ言葉だよね。

 Takram Cast(https://cast.takram.com/)も聴いてみよう。

 

 

 

 

 

 

イノベーション・スキルセット 世界が求める人材とその手引き” 

とても勉強になりました。

やる気がムラムラ湧いてきたし、自分のキャリアパスもクリアになった気がする。

 

 

 

【心を測る手法】脳波(2/2)

脳波を測る方法に関して、解説します!(2頁目)

1頁目は以下から…

pororoca.hatenadiary.com

 

 

 

多電極か単電極か

電極の数の違い。つまり脳波を測るポイント数の違い。

 

1)情報量多い!でも面倒!多電極型

シンプルに電極数が多いタイプ。

大学とかの研究目的で使用されるような脳波計は、基本的にはこの多電極型のはず。頭皮上のどこでも脳波は取れるので、基本は位置も数も自由にやっていい。

ただ、どれくらいの電極数があればいいか?そもそも電極の配置位置って頭のどこからでもいいの?などなど、自由にやれと言われても、どうしたらいいか分からないよね。

そこで、国際10−20法(こくさいTen-Twentyほう と読む。なぜか中は英語)

という国際的なルールがある。

これをみると、だいたいどの位置に電極を配置すべきか、どの程度の数が必要か、基準として何となくわかる。

このルールに準拠しておけば、”変に周りから突っ込まれる心配はない”、そんな位置づけと個人的には思ってる。

重要なのは研究の切り口なのに、計測手法で突っ込まれると悲しいしね。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/脳波”より引用

 

多電極型メリット①:位置による反応の違いが計測できる。

当然だけれど、電極位置が多いので、どの部位の反応が大きいか、

比較することができる。それによって意味付けができる。

例えば、前頭部位での反応が大きいので、”思考している”可能性が高い、など。

これは単電極ではできない。

前頭からしか計測していない状況で、”前頭からの信号が大きい”となっても、

同じく後頭部などの他の部位の反応も大きく出ている可能性があるからだ。

前頭部位で反応が大きく、他の部位で反応が小さいことが計測できて、初めて、

部位による意味付けができる(この場合、”思考している可能性が高い”など)。

 

多電極型メリット②:刺激に対する反応を、電極間で相加平均できる

個人的にはこれが大きいと思ってる。

基本的に脳波信号にはノイズが多く乗っている。

その為、パッとしかこない一瞬の刺激に対する反応を見たい時、

きっとピン!と反応した形跡があるのだろうけど(”スパイク”という)、

よほどはっきりした反応でない限り、ノイズに埋もれてしまって見つけられない。

その為、その”パッとしかこない一瞬の刺激”を何回も繰り返し提示して、

その繰り返した試行分の脳波信号を相加平均する。

毎回同じ刺激を提示するので、その刺激に対するスパイクは毎回発生するけれど、

ノイズは自由なので毎回均等には入らない。

なので、相加平均すると刺激に対するスパイクが目立つようになり、取り出せる。

ただ、それはなかなか負荷が高い。

当然何度も繰り返し”同じ”刺激を提示されて被験者は疲れるし、慣れも出てくる。

そもそも繰り返し発生させられない刺激である可能性もある。

でも多電極ならば、”電極間”で相加平均ができる(おでこ&頭頂など)。

その為、パッときた刺激に対して、とても有効となる。

 

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2)とにかく簡単!単電極型

こちらは情報量の多さに関しては、多電極型には当然及ばない。

電極が一つしかないから、部位による意味付けができない。

 

単電極型の脳波計で主に出来ることは、基礎律動を捉えること。

よく聞く、脳波のα波・β波といったものは、基礎律動(背景脳波)と呼ばれ、

基本的にいつでも、脳全体から出てくるものとされている。

その為、1箇所からしか計測しない、単電極の脳波計でも捉えることができる。

なので、単電極の脳波計でも「α波が出ているからリラックスしている」等は

言える可能性は高い。

あとは部位を特定せずに「脳全体が活性化している/不活性になっている」とは

言えるだろう。

また、勘違いされがちだけれど、

”計測精度”に関しては、単電極か多電極かは関係ない。両者に差はない。

 

ウェットかドライか

正確な計測の為には、頭皮と電極の間の電気抵抗を極力減らす必要がある。

頭皮の間には髪の毛や皮脂やなんやらがあり、それらは電気抵抗を生み、

なんやら分からないノイズが生まれてしまう。

ここでの電位抵抗のことを”接触インピーダンス”という。単位はΩ。

その接触インピーダンスをどうやって減らすか、それとも妥協するかの話。

研究用とかだと、接触インピーダンスは5kΩ以下程度にすべきというのが

一般的なはず(そうするとほぼ必然的にウェット型になる)。

 

1)ベタベタ!でも高精度!ウェット型

頭皮と電極の間に、導電性ジェル・ペーストもしくは生理食塩水を塗るタイプ。

電気抵抗は少なくなり、計測精度は上がるのだけれど、

計測が終わった後に頭を洗わないといけないので、パパッとは計測できない。

大学の研究なんかではほとんどの場合このウェット型の機器を使っているはず。

面倒だけれど精度の良い計測の為には必要だから、という考え。

(被験者もきっと学生だから、時間があるしね)

ただ国際10−20法に準拠した脳波計は電極が21個あり、その一つ一つにジェルを塗り、頭皮に馴染むように電極をグリグリ擦り付ける。

全ての電極の接触インピーダンスが5kΩ以下になるまで、1時間程度かかるのは結構ザラにある。つまり超面倒。

 

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2)ただただ簡単!ドライ型

こちらは何も塗らないタイプ。必然的に精度は落ちる。けど計測は超簡単。

一般的に”ウェアラブル脳波計”と言われている類の脳波計は、この型が多い。

計測後の洗髪もいらないし、外せばそれで終わり。

基本的にはウェット型よりも接触インピーダンスの許容範囲が緩くても

いい時に使うものだけれど、それでも一定の基準はある。

(そうでないと、脳波かノイズか本当に分からないし)

その時に、ドライ型はウェット型と違ってジェル塗ったりグリグリしたり”出来ない”ので、インピーダンスを下げる方法がなく、途方にくれることは、ちょくちょくある。

 

 



今日はここまで。

次回は、実際にどんな脳波計があるか、ウェアラブル中心に見ていこう。