感情センシング&ビジネスデザイン

人の”こころ”を測るセンシング手法の紹介と、それらのビジネス活用の可能性について考えます。

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巷の脳波計測デバイス(Emotiv社)

 

安い!オシャレ!高性能!

元々研究やマーケティング用の脳波デバイスは、医療機器ではないものでも百万円を超えるものが一般的でした。「なんでこんなに高いの?」と思いながらも渋々受け入れていたユーザー群に、十万円程度の価格帯で、価格破壊の風(しかもデザインもいい!)を吹き込みました。

Emotiv社の提供する脳波計を、一部紹介します。

 

注意:本当に私の独断と偏見でコメントしております。間違いや「こいつわかってないなぁ」などありましたら、それはすみません!

 

 

Epoc + https://www.emotiv.com/epoc/

基本SPEC

◾️金額:$699

◾️電極数:16個(チャネル14個+リファレンス2個)

◾️電極タイプ:ウェット(生理食塩水)

◾️駆動時間:〜12時間

◾️その他センサ:9軸角速度・3軸加速度・3軸コンパス

◾️通信:BLE

◾️計測箇所: AF3, F7, F3, FC5, T7, P7, O1, O2, P8, T8, FC6, F4, F8, AF4

◾️サンプリングレート:2048Hz

◾️検出域:0.16 – 43Hz

感想:高信頼性の研究/マーケティング用途デバイス

研究などでも使用される信頼性の高いモデル。Emotiv社はウェアラブルバイスとしての脳波計も作っているけれど、キャップ型のガチの脳波計も作ってる企業。なのでそのデバイスの信頼性は高い。このモデルも生理食塩水を使用してインピーダンスを下げるウェット型で、電極位置もバランスよく、9軸加速度で首の動きを検出できる(そこからノイズの発生タイミングを特定できるし、生理情報として使用することもできる)、器用で色々なことが高精度でできる。主にニューロマーケティングの企業で使用されているが、たまに大学の研究とかでも見る印象がある。電極数も多いし、ウェット型のため、研究用としては必須?のERPも取れる。

でも個人的には、研究用のキャップ型で超多電極のガチの脳波計を、少しだけ簡便にしたものという印象で、研究やマーケティング時の被験者の負担を少しだけ減らすものにしか過ぎないように思う(しかも電極数とインピーダンスから、計測精度を多少は犠牲にしている)。ただ、最大の特徴はこの安価な点だと思う。研究用の日本製の脳波計と比較すると、値段は破格の1/10程度。そういう意味では非常に優れた脳波計だと思う。立ち位置としては、超コストメリットがあり、若干使いやすい実験用の脳波計といったところかな。

あとリファレンスの位置が頭頂だから、頭頂付近の計測電極の信号には影響しそうな気がする(信号が小さくなる)。頭頂付近の信号は結構意味的に大事だったりもするので、やっぱりリファレンスは耳たぶあたりの計測部位から離れたところからとった方が良いのではと個人的には思います。

 

INSIGHThttps://www.emotiv.com/insight/

基本SPEC

◾️金額:$299

◾️電極数:7個(チャネル5個+リファレンス2個)

◾️電極タイプ:ドライ(厳密にはセミドライ?先端を湿らせておくもの)

◾️駆動時間:〜9時間

◾️その他センサ:3軸加速度・3軸角速度(ジャイロ)・3軸コンパス

◾️通信:BLE

◾️計測箇所:AF3, AF4, T7, T8, Pz

◾️サンプリングレート:128Hz

◾️検出域:0.5 – 43Hz

感想:ウェアラブルらしいデザインも、中途半端?

この脳波計は個人的には結構謎なポジション。研究用として使うには、電極位置も固定で数も少なく、心もとない。一方でウェアラブルとして使用するにはゴツすぎるような気がする。公式WEBサイトでは、このINSIGHTを装着して車を運転したり外で読書したりと、ウェアラブルバイスとして普段使いしているような写真があるのだが、正直「それは無理があるだろ。。」と思う。やるならウェアラブルに振り切ってもっと電極数も少なく、本当に目立たない形状にすべきかと。

ただ、このレベルまで簡易であれば(ウェットでもないし)、一般参加型の実験ができるはず。例えばコーヒーのサンプリングのシーンで、イベントブースを設置してそこで一般消費者にコーヒーを飲んでもらい、その時の脳波を計測するといったような、「体験型キャンペーン(サンプリング)」のようなことには使用できる可能性は高い。

感情等の高位情報の取得が可能で、かつウェアラブルとして簡易装着と長時間装着に耐えうる設計として、ギリギリのところを攻めた機構なのだと思う。

電極の接触部分は髪をかき分けられるような櫛形の設計になっていて、またセミドライ式でもあり、インピーダンスを下げる工夫はよく見て取れる。他のクラウドファンディングでポッと出てくるようなウェアラブル脳波計とは一味違う、強い脳波計メーカーならではの細部のこだわりは見て取れる設計なのかなと思います。左の乳様突起あたり(左耳の裏あたり)にリファレンスがあるので、他の脳波信号の強弱にあまり影響しなさそうで良いかと。

 

MN8 https://www.emotiv.com/workplace-wellness-safety-and-productivity-mn8/

f:id:POROROCA:20200814141540j:plain

Emotiv社サイト(https://www.emotiv.com/workplace-wellness-safety-and-productivity-mn8/attachment/fb-mn8/) より引用

基本SPEC

◾️金額:$??

◾️電極数:2個(チャネル1個?+リファレンス1個?)

◾️電極タイプ:ドライ

◾️駆動時間:〜6時間

◾️その他センサ:モーションセンサ(詳細不明)

◾️通信:BLE

◾️計測箇所:T7 or T8 ??

◾️サンプリングレート:??

◾️検出域:??

感想:ライトに振り切った機構!

これは製品版ができているのかどうか、私の調べる限りでは分からない(2020.5.20時点)。2019年9月にCG画像が公開され、今はエンターブライズ版として購入が可能なようだが、予約購入なのか、それとも製品保証ができていない段階のものなのか、とにかく他の2つとは異なり、WEBサイト上でコンシューマ向けに販売しているものではない。

機構としては、個人的には非常に良いと思っている。ウェアラブル脳波計ならば機能を多少犠牲にしてもこのくらい振り切ったモノにすべきと思う。イヤホンオーディオとマイク機能がある為、日常生活で使用しながら脳波の計測ができる。

ただ、リファレンスも含めて2チャネルの電極数のよう(?)なので、右か左のどちらかからしか信号が取れない模様。さらに脳波の取得部位が、この形状だと乳様突起上かつ外耳に接している部分(フック型のイヤホンの耳にかかる部分)で、この部分からの脳波信号はかなり微弱なはず(ただでさえ信号が弱い側頭部よりもさらに下側なので)。表情筋も通っている箇所で筋電の影響もあるし、検出したい信号のパワーが弱いのでノイズにとても気をつけなくてはいけなくなる。閉眼開眼試験で閉眼時のα波(基礎律動)も計測できないような気がする。WEBサイトには独自のアルゴリズムで集中とストレスが検出できると記載されているけれど、基礎律動も取れないとすると結構厳しいのではと思う。

正直欲しい。使ってみて、生データをみてみたい。