感情センシング&ビジネスデザイン

人の”こころ”を測るセンシング手法の紹介と、それらのビジネス活用の可能性について考えます。

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【考察】日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年

世界的なコンサル企業のガートナー社が、毎年恒例の「ハイプ・サイクル」を今月10日に発表しましたね。今回発表のものは「日本における未来志向型インフラ・テクノロジ」とのこと。心踊るワードですね。

過去を遡りつつ、どんなのが出てきたか見てみます。

 

ハイプ・サイクルとは?

言わずと知れた世界最大級のIT技術のリサーチ&アドバイザリー会社であるガートナー社(Fortune500の7割以上が顧客とのこと。世界を牛耳ってますね)が定期的に発表するレポートです。テクノロジーとアプリケーションがただのハイプ(誇大広告)なのかそれとも本当に実用的になりそうなのか、それらの変遷をわかりやすくマッピングしたものです。

IT業界のトレンド予想、みたいなイメージで見るのが良いと思います!

どんな風に見るの?

最初に見方の説明から。

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https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20200910 より引用
縦軸は「期待度」:

まず縦軸は「期待度」ですね。上に行けばいくほど期待されている技術になります。ちなみにこの「期待度」は何を持って判断しているのかは公表されておりません。メディアでの取り上げられ方と相関性はあるのでしょうが、この辺りはガートナーのリサーチャーやアナリストの考察とノウハウが多分に入っているのでしょう。

横軸は時期:

横軸の指標は以下の通りです。

(本サイト:https://www.gartner.com/jp/research/methodologies/gartner-hype-cycleより引用)

●黎明期: 潜在的技術革新によって幕が開きます。初期の概念実証 (POC) にまつわる話やメディア報道によって、大きな注目が集まります。多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていません。
●「過度な期待」のピーク期: 初期の宣伝では、数多くのサクセスストーリーが紹介されますが、失敗を伴うものも少なくありません。行動を起こす企業もありますが、多くはありません。
●幻滅期: 実験や実装で成果が出ないため、関心は薄れます。テクノロジの創造者らは再編されるか失敗します。生き残ったプロバイダーが早期採用者の満足のいくように自社製品を改善した場合に限り、投資は継続します。
●啓発期:テクノロジが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まります。第2世代と第3世代の製品が、テクノロジ・プロバイダーから登場します。パイロットに資金提供する企業が増えます。ただし、保守的な企業は慎重なままです。
●生産性の安定期: 主流採用が始まります。プロバイダーの実行存続性を評価する基準がより明確に定義されます。テクノロジの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつあります。

この区分も基本は数値などの明確な判断基準は公表されておりません。期待度と同様にガートナー社の独自のノウハウがあるものと推測できますね。

今回のハイプ・サイクルはどんな位置づけ?

今回発表のハイプ・サイクルは「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」。「日本の」かつ「インフラテクノロジー」の今と未来の様子をレポートしてくれているものと考えて大丈夫でしょう。

ちなみにハイプサイクルはこれ一種ではなく、世界版や他のジャンルのものも様々あります。日本限定ではないですが、他には「先端テクノロジのハイプ・サイクル」は基本的なトレンドを抑える為には見ておくべきと思います。

このトピック(日本における未来志向型インフラ・テクノロジ)は今年から?なのかなの。昨年までは日本版はただのテクノロジだけだったように思いますが、細分化されたのでしょうか。

 

では、みてみましょう!

ガートナー社の考察から:

COVID-19の拡大に伴い、普及が進む「ロボティック・プロセス・オートメーション」と「デジタル・ヘルス」

(本サイト:https://www.gartner.com/jp/research/methodologies/gartner-hype-cycleより引用)

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とデジタル・ヘルスが、幻滅期を超えて普及に向けて動き出しているようです。

RPAの促進はそうでしょうね。2019年の日本版ハイプ・サイクル(「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」:https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20191031 でも工業用のセンシング技術の発達が触れられていましたが、このコロナ化でまずますオートメーション化と効率化が進むにあたり、RPAの普及は間違いないと個人的にも思います。レポート本文でも言及されていましたが、夢見がちなものよりも実際に「使える」現実的なものが普及してくることも、容易に想像できます。売上が減り、各社利益最大化のためのプロセスの効率化にしのぎを削る状況で、イノベーティブな要素にはなかなか手はでにくいでしょう。

デジタル・ヘルスは少し勘違いしがちな単語だと思います。ここでの意味は、ヘルスケア業界におけるデジタル化の促進のことを指しており、オンライン診断などの遠隔医療などの医療・診療行為のデジタル化が主です(あくまで主であるだけで、遠隔診療系に限定している訳ではないようですが)。

AppleWatchが血中酸素濃度を計測できるようになったこともあり、生体センシングによるヘルスケアの促進のことを指しているのか、と一瞬心躍りましたが、もっと現実的なもののようです。ただ、オンラインの診断や診療、医療アドバイスが普及してくると、当然普段のヘルスケア情報もあった方が良いとなるはず。その時には、生体センシングの出番ですね!

遠隔が基本とすると、装着行為に始まるキャリブレーションのプロセスをユーザーに任せることになります。そうすると本格的な治療行為というのはまだ難しそうですが、ウェルネスよりも一歩踏み込んだ、診療判断の補佐情報として使用する、健康診断の問診票のより精度の高い情報として活用する、などの使用用途は今後不要な対面を避けるという方向性の中では、より普及してくるものと思います。

個人的にはAR(拡張現実)も幻滅の谷を超えて欲しい。。遠隔コミュニケーションにおいて必須となる要素ですし、これがインフラとして普及してくると、生体センシングの活用シーンも大きく広がるはずです。

 

各種要素をみてみましょう!:

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基本的にはこのブログのタイトルの通り、私は生体センシングが好きなので、生体センシングが該当しそうな領域をみていきます。

黎明期にあるスマート・ワークスペース、デジタルツイン、次世代型リアル店舗なんかはまさにセンシングからの適切な情報判断が必要となる領域ですよね。

①スマート・ワークスペース × 生体センシング

スマート・ワークスペースは、Weworkのような近郊の空きビルを貸しオフィスにしてしまう新しいビジネスモデルメインの見方や、Zoom等のwithコロナ時代の新しいワークスタイルに合わせたテクノロジー(主に遠隔コミュニケーションに特化と思います)の見方があると思いますが、生体センシングも大いに活躍できる領域であると思います。

例えば今後議論のマトになるであろうセンターオフィスの「皆が集まりたくなるオフィス」にする役割や、ますます競争が激しくなるであろうシェアオフィス業界の、顧客を誘引する付加価値として、生体センシングによるその人にあった集中・リラックス空間の演出や、空間自体の評価のためのセンシングなど、大いに可能性があると思います。

②デジタルツイン × 生体センシング

デジタルツインもなかなか可能性に満ちていると思います。

現在ではデジタルツインに関連する技術やサービスは、多くはゲームエンジンを活用して、まず人を共同の空間にジャックインさせるようなソフトの仕組みに各社注力しているような印象を個人的には持っております。しかしその後、ジャックイン先が安定してきた際に、ジャックインする個々人の状態をより詳細にバーチャル空間上に表現したいという流れになるのは自明なように思います。その状態の把握にはエッジテクノロジとして当然センシングが必要となり、かつ人の心地よさやコミュニケーションといった「感性」や「人体の感じ方」の要素を取り入れるためには生体センシングが必要となるわけです。

バーチャル空間にジャックインするためには基本的には何らかのガジェットを装着する必要があり(VRスコープが有力そうですよね)、その為センシングはとてもしやすい環境になります。顔面付近に装着するデバイスなら、脳波も心拍も加速度も筋電も基本的には取り放題。そしてそれはどのメーカーも容易に思いつくことと思いますので、間違いなくセンシングは流行る、はず!

③次世代リアル店舗 × 生体センシング

次世代型リアル店舗もいいですよね。個人の趣味趣向をセンシングで取りたい、というのは昔から小売は試みていたりしましたがなかなか上手くいっていないですね。せいぜいが面白PRイベント止まりで、しっかり購買まで持っていける継続性のあるサービスになっている例は私の知る限りありません。

基本的には技術を入れる場所としては商品単価の高い日用品ではなく、高級ブランドの洋服や化粧品などの商品単価の高い製品の購入時に技術をど運輸する形となると思います。特に化粧品は、Withコロナの文脈もあり、従来の対面型&テスターを試してもらうスタイルを変更しなくてはいけない、かつ高単価商品のため売り場改善のための財力があるため、この次世代型リアル店舗への投資は今度増えてくると予想します。対面営業の効果検証のためのセンシング、対面販売時に顧客をセンシングして販売員の接客を評価する、顧客の心理状態に合わせて接客方法を変える、だったり、肌の状態のセンシングで本当に自分にあった化粧品をリコメンドしてくれたり、様々な可能性が考えられますね。

④コネクテッド・プロダクト × 生体センシング

コネクテッド・プロダクトもセンシングの可能性が十分にありそう。ネットワークに常時接続し、最適な状態に変化するプロダクトのことを指すこの用語(基本はIoTといえばこのコネクテッドプロダクトのことを指すようです)。生体センシングから使用者の状態を取得して、その状態と、その他の環境的要因や作業内容の情報とを合わせて、さまざなな判断をしてくれるプロダクトはありえそう。

スマートホームと連携するスマート家電やロボットなどが、自分が家に帰ってくると疲労状態や気分などに応じて家を快適な温度にして、明日に疲労を残さないように最適なベッドイン時間と食事内容をアドバイスしてくれて、それに合わせて照明や温度・湿度を時間ごとに操作してくれる、などなど、妄想は膨らみますね。

 

 

以上、定期的に出てくるハイプ・サイクルをみていると勉強になりますね。妄想も膨らみます。毎年答え合わせなんかをしていると、自分の先見も鍛えられて良いかもしれません!