感情センシング&ビジネスデザイン

人の”こころ”を測るセンシング手法の紹介と、それらのビジネス活用の可能性について考えます。

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センサーメーカーのビジネスモデルについて

脳波・心拍などなどのセンシングデバイス市場は基本的にニッチ!

イヤホンや腕時計みたいにバンバン売れるものではありません。

その中で、センシングデバイスメーカーはどのようにビジネスを成立させているのか、リサーチ&解説します。

 

 

 

高価格で狭く?低価格で広く?

バイスの性能をどの程度まで絞り、かつどの程度の価格帯で提供するか。

 

1)一番星を目指せ!「高価格で狭く」

どんな企業のどんなモデル?

極めて高精度の計測ができるものをニッチな市場に販売するモデル。

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計測それ自体が価値になることが多く、他の提供価値やサービスモデルを考える必要がない。

例えばMRIを製造しているキャノンメディカルシステムズ社や、多電極脳波計のメーカーの日本光電社など。

彼らは高精度の計測が可能な機器を、大学などの研究機関や、企業のマーケティング部門、また診断用途に使用する医療機関などに販売している。

極めて高い金額(最低でも数百万〜億)での販売が基本であり、かつ機器自体のみではなく付随するソフトウェアも専用のものを販売する為、一回の売上単価が非常に高い。

その分市場は小さいが、その高い売上と利益率で成立させている。

機器とソフトウェアの一式を一括販売し、あとはおまかせ、のスタイルが多い。基本的には機器を使いこなすのはユーザー側の仕事で、専門職の方の使用を想定していることが多い。イニシャル一括、ランニング(サポート含む)ほぼなし、の分かりやすい販売モデル。

またその機器特有の消耗品も継続的に販売することが可能で、一度販売すると楔のように顧客との関係性を繋ぎ止めてくれる存在になることも魅力的。

ポイントは?

製品の信頼性はもちろんのこと、それを提供する企業側の信頼性も重要になる。ベンチャー企業がこの領域に踏み込むことは中々に難しいと思う。また医療機器として販売することが基本となる為、その審査や医療機器メーカーとしての審査をパスする為の金銭的な体力も必要になる為、ハードルは高い。

生理指標では脳周りしか難しい領域だと思う。心拍・加速度・表情・音声などは、心拍は医療用途の使用も可能だけれど、計測が簡易のため高額でセンシング機器を販売することが難しいこと、また加速度・表情・音声は医療機器のように本格的に診断等で使用するには個人差や状況による計測精度のブレを補正しきれていないことから、中々高付加価値のものとして販売するには難しいように思う。

メリットは?

・計測それ自体が価値の為、他のサービスモデルを考える必要がなく、技術開発・営業リソースを一点集中できる。

・一回の単価が小さく、購入層が広いため、事業開発計画が立てやすい。

・イニシャルでの刈り取り想定のため、キャッシュフローが早期安定しやすい。

・一度製品を導入するとスイッチングコストが大きいため、顧客は中々切り替えない。そのため、製品に付随するソフトや消耗品を継続的に販売しやすい。

・一度そのニッチな市場で認められると、他社が追随しにくい。

リスクは?

・サービスモデルに幅がなく、他産業からのモデル自体の破壊(計測行為が必要なくなる等)があった場合に対応できない。

・一括納品で終わることが多く、データ蓄積等の「使用されるほど大きくなる」プラットフォーム機能がないことが多く、事業の発展性に欠ける。

・医療機器承認、企業ブランド、多大な開発投資など、時間とお金がとてもかかる。

・(どの市場よりも特に)測定値のミスなどの失敗リスクが高い。

 

2)市場を埋め尽くせ!「低価格で広く」

どんな企業のどんなモデル?

ある程度の精度のものをサービスと合わせて広く市場に展開するモデル。

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計測それ自体を価値にすることは難しいため、何らかのサービスと結びつけて販売することが多い。

例えばFitBitやNeuroSkyなどの、俗に言う「ウェアラブル計測機器」を持っている企業がこのモデルになることが多い。

彼らは例えばランニングや健康管理などの何らかのアプリケーションとセットにしてコンシューマ向けに販売、もしくは働き方支援やオフィス設備と一体化したサービスとして企業に販売するなどしている。

バイス単体の売上単価は低く(〜5万円程度)、その分コンシューマも購入ができ、市場規模が大きいモデル。

ハードを製造開発する必要があるため、ある程度の資金と時間は必要ではあるものの、基本的にシンプルな原理さえ知っていれば生理指標の計測デバイスは製作できてしまうため、ベンチャー企業でもトライできる領域となる。

クラウドファンディング系のサイトではよく、小型でオシャレなデバイスが出ている。初期投資さえある程度の金額であれば、実現できてしまう。

ポイントは?

参入障壁が低く競合が多いため、なんちゃってで製作するとすぐに他の企業にパイを取られてしまう。また、デバイスそれ自体の価値が低いため、どんなサービスと連携させるかがかなり重要となる。デバイスメーカーとしての力量はもちろんだが、サービスデザインやビジネスモデル開発の力量も大きく必要となる領域。

本領域の多くの企業は、デバイス単体の売上では単価が低く儲からないため、デバイスのデータを利用するためのAPIや、データから集中やリラックスなどの意味づけをするアルゴリズムのライセンス料で刈り取るモデルとなっている。

メリットは?

・PR如何によっては、一気にバズらせて市場を沸かせることができる。

・サービスモデルに幅がある為、エッジデバイスとして広く浸透すれば(iphoneのように)、そのデバイスを軸に各社がサービスを展開するような、プラットフォーマーポジションに立てる可能性がある。

・アプリーケーションやサービスと一緒に販売する為、データの蓄積→二次利用やアグロリズム精度向上等の、成長性があるビジネスにすることができる。

 

リスクは? 

・計測以外の提供価値を考えなくてはいけない為、製品開発の知見だけでは戦えない。

・購入層が広いため、製造とは別にPR戦略ないし費用を確保する必要があり、なんだかんだ費用がかさむ可能性あり。

・ランニングでの刈り取り想定のため、キャッシュフローが長期化する。

・スイッチングコストが小さいため、製品品質もしくはサービスに落ち度があるとすぐに切り替えられてしまう。サービスで何らかの縛りを持たせるような工夫が必要。

・すぐに真似される可能性が高い。

 

 

次回、まだまだもう少し深掘ります!