感情センシング&ビジネスデザイン

人の”こころ”を測るセンシング手法の紹介と、それらのビジネス活用の可能性について考えます。

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【心を測る手法】脳波(2/2)

脳波を測る方法に関して、解説します!(2頁目)

1頁目は以下から…

pororoca.hatenadiary.com

 

 

 

多電極か単電極か

電極の数の違い。つまり脳波を測るポイント数の違い。

 

1)情報量多い!でも面倒!多電極型

シンプルに電極数が多いタイプ。

大学とかの研究目的で使用されるような脳波計は、基本的にはこの多電極型のはず。頭皮上のどこでも脳波は取れるので、基本は位置も数も自由にやっていい。

ただ、どれくらいの電極数があればいいか?そもそも電極の配置位置って頭のどこからでもいいの?などなど、自由にやれと言われても、どうしたらいいか分からないよね。

そこで、国際10−20法(こくさいTen-Twentyほう と読む。なぜか中は英語)

という国際的なルールがある。

これをみると、だいたいどの位置に電極を配置すべきか、どの程度の数が必要か、基準として何となくわかる。

このルールに準拠しておけば、”変に周りから突っ込まれる心配はない”、そんな位置づけと個人的には思ってる。

重要なのは研究の切り口なのに、計測手法で突っ込まれると悲しいしね。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/脳波”より引用

 

多電極型メリット①:位置による反応の違いが計測できる。

当然だけれど、電極位置が多いので、どの部位の反応が大きいか、

比較することができる。それによって意味付けができる。

例えば、前頭部位での反応が大きいので、”思考している”可能性が高い、など。

これは単電極ではできない。

前頭からしか計測していない状況で、”前頭からの信号が大きい”となっても、

同じく後頭部などの他の部位の反応も大きく出ている可能性があるからだ。

前頭部位で反応が大きく、他の部位で反応が小さいことが計測できて、初めて、

部位による意味付けができる(この場合、”思考している可能性が高い”など)。

 

多電極型メリット②:刺激に対する反応を、電極間で相加平均できる

個人的にはこれが大きいと思ってる。

基本的に脳波信号にはノイズが多く乗っている。

その為、パッとしかこない一瞬の刺激に対する反応を見たい時、

きっとピン!と反応した形跡があるのだろうけど(”スパイク”という)、

よほどはっきりした反応でない限り、ノイズに埋もれてしまって見つけられない。

その為、その”パッとしかこない一瞬の刺激”を何回も繰り返し提示して、

その繰り返した試行分の脳波信号を相加平均する。

毎回同じ刺激を提示するので、その刺激に対するスパイクは毎回発生するけれど、

ノイズは自由なので毎回均等には入らない。

なので、相加平均すると刺激に対するスパイクが目立つようになり、取り出せる。

ただ、それはなかなか負荷が高い。

当然何度も繰り返し”同じ”刺激を提示されて被験者は疲れるし、慣れも出てくる。

そもそも繰り返し発生させられない刺激である可能性もある。

でも多電極ならば、”電極間”で相加平均ができる(おでこ&頭頂など)。

その為、パッときた刺激に対して、とても有効となる。

 

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2)とにかく簡単!単電極型

こちらは情報量の多さに関しては、多電極型には当然及ばない。

電極が一つしかないから、部位による意味付けができない。

 

単電極型の脳波計で主に出来ることは、基礎律動を捉えること。

よく聞く、脳波のα波・β波といったものは、基礎律動(背景脳波)と呼ばれ、

基本的にいつでも、脳全体から出てくるものとされている。

その為、1箇所からしか計測しない、単電極の脳波計でも捉えることができる。

なので、単電極の脳波計でも「α波が出ているからリラックスしている」等は

言える可能性は高い。

あとは部位を特定せずに「脳全体が活性化している/不活性になっている」とは

言えるだろう。

また、勘違いされがちだけれど、

”計測精度”に関しては、単電極か多電極かは関係ない。両者に差はない。

 

ウェットかドライか

正確な計測の為には、頭皮と電極の間の電気抵抗を極力減らす必要がある。

頭皮の間には髪の毛や皮脂やなんやらがあり、それらは電気抵抗を生み、

なんやら分からないノイズが生まれてしまう。

ここでの電位抵抗のことを”接触インピーダンス”という。単位はΩ。

その接触インピーダンスをどうやって減らすか、それとも妥協するかの話。

研究用とかだと、接触インピーダンスは5kΩ以下程度にすべきというのが

一般的なはず(そうするとほぼ必然的にウェット型になる)。

 

1)ベタベタ!でも高精度!ウェット型

頭皮と電極の間に、導電性ジェル・ペーストもしくは生理食塩水を塗るタイプ。

電気抵抗は少なくなり、計測精度は上がるのだけれど、

計測が終わった後に頭を洗わないといけないので、パパッとは計測できない。

大学の研究なんかではほとんどの場合このウェット型の機器を使っているはず。

面倒だけれど精度の良い計測の為には必要だから、という考え。

(被験者もきっと学生だから、時間があるしね)

ただ国際10−20法に準拠した脳波計は電極が21個あり、その一つ一つにジェルを塗り、頭皮に馴染むように電極をグリグリ擦り付ける。

全ての電極の接触インピーダンスが5kΩ以下になるまで、1時間程度かかるのは結構ザラにある。つまり超面倒。

 

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2)ただただ簡単!ドライ型

こちらは何も塗らないタイプ。必然的に精度は落ちる。けど計測は超簡単。

一般的に”ウェアラブル脳波計”と言われている類の脳波計は、この型が多い。

計測後の洗髪もいらないし、外せばそれで終わり。

基本的にはウェット型よりも接触インピーダンスの許容範囲が緩くても

いい時に使うものだけれど、それでも一定の基準はある。

(そうでないと、脳波かノイズか本当に分からないし)

その時に、ドライ型はウェット型と違ってジェル塗ったりグリグリしたり”出来ない”ので、インピーダンスを下げる方法がなく、途方にくれることは、ちょくちょくある。

 

 



今日はここまで。

次回は、実際にどんな脳波計があるか、ウェアラブル中心に見ていこう。