感情センシング&ビジネスデザイン

人の”こころ”を測るセンシング手法の紹介と、それらのビジネス活用の可能性について考えます。

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<コンペ備忘録>ヤングスパイクス・インテグレーテッド部門日本代表選考会(2018)

若手クリエイターの登竜門!

ヤングカンヌ/スパイクスコンペティション2018日本代表選考会・インテグレーテッド部門の挑戦記録です。備忘録も兼ねて。

 

 

コンペ概要:

ヤングカンヌ/スパイクスコンペティションとは

ヤングライオンコンペティション(通称:ヤングカンヌ)、及びヤングスパイクスコンペティションは、カンヌライオンズ、スパイクスアジアそれぞれで行われる30歳以下のプロフェッショナルを対象としたコンペ形式のオフィシャルプログラムです。各国の代表2名1チームが参加し、現地で与えられた課題に対し、定められた時間内に作成した映像や企画書の提出、またはプレゼンテーションにより、GOLD, SILVER, BRONZEを決定します。

https://www.canneslionsjapan.com/youngcompetition/aboutより引用>

 

結果:

GOLD!日本代表に選考されました!

ちょうどクライアント先に向かう途中で、横断歩道を渡っている時に電話で結果のご連絡をいただきました。人目も憚らず大きな声出ましたね。今でもその時の感動、覚えてます。

 

チーム:

・相方:アードディレクター。ビジュアルの全てを担当

・私:コピーライター。文言(英語)の全てを担当

アイディエーション〜企画設計までは2人で。そこから上記の役割で分業、の進め方。この回で2回目のペアでした。

 

実際の時間の使い方:

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9/5(水):ブリーフ読み(別々)(2h)

・英語担当が私なのでまずはざっと翻訳し、相方に共有。2人で別々に読み込みます。

・使い捨てプラスチック削減の、世界の広告事例を調べます。

・上記2点を踏まえて、どんなのが勝ち筋/負け筋なのか考えます。

 アイディアはこの時まだあまり出さないです。思いつけばもちろんOKだけれど。事前知識がない状態で、ズレてるけどいい感じのアイディアが思いついてしまうとなかなか捨てられず辛いので、まずはブリーフの解釈とどんなアイディアが勝ち筋かを2人で共有できるまでは、あまり考えないです。

今回のテーマは「使い捨てプラスチックの消費量削減」でした。

9/6(木):ブリーフ解釈&事例調査内容の共有(2h)

ここで2人の解釈と事例調査の結果を共有して、勝ち筋/負け筋を整理します。

どんな感じのコンペになるか(何系のアイディアが多く出てきて、どんなアイディアグループができて、審査員がどんな会場でどんな審査をするのか等)イメージしながら整理します。

よく審査員になりきります!本コンペはスケジュールが急で、きっと審査は夜間。審査員は仕事で疲れている中集められて、「うゎーこれ全部目を通さなきゃいけないのかぁ。もう11時だよ…」なんて会話をしているイメージでした。

そんなイメージもしながら、勝ち筋/負け筋は以下のように整理しました。

①(過去事例から)海系・タバコ系はNGと負け筋と判断

海系はとにかく実際の過去事例が多すぎました。海にビニール袋が浮かんでいる絵では絶対に勝てない。2015年に有名になったこのウミガメの鼻からストローを抜く動画、これよりも強いインパクトを残すことは困難と考えました。他にも海や海岸でのプロモーションは結構過激なこともやっており、なかなか過去事例に勝るインパクトを残すことは難しいと考えました。

youtu.be

また、ブリーフにはタバコのフィルターも代表的な使い捨てプラスチックゴミと記載があったのですが、これも負け筋と考えました。タバコとプラごみを結びつける事例はなかったのですが、そもそもタバコがメインの過去事例は非常に多いため、タバコを混ぜてしまうとプラごみよりも要素が強く出すぎてしまい、伝えたいことが散らかってしまうと感じました。他のテーマでもそうですが、メインテーマを伝える際に「ペット」や「赤ちゃん」など、それ自体のメッセージ性が強くかつ多くの広告で使用されている要素を取り入れると、よほど関係のあるコンセプトでない限りは、主張が強すぎてメッセージが伝わりにくくなってしまうと考えています。

②珍しいもの(マイクロプラスチック)に飛びつかない

ブリーフにはマイクロプラスチックの記載がありました。ペットボトル片などのポイ捨てされたプラスチックが自然分解されず、細かい砂状になったままいつまでも漂っている環境問題です。このマイクロプラスチックはそれ自体が見た目にもキャッチーで過去事例も少なく、非常に使いやすいと最初は感じました。しかし、それゆえにアイディアの被りが多そうなこと、またマイクロプラスチック自体があまり知られていないため、その目新しさに注意が奪われて本当に伝えたいメッセージが消費者に伝わらないのではと考えました。

③「プラごみのポイ捨て」自体を減らす施策ではないことを抑える

ブリーフは使い捨てプラスチックの消費を削減することをゴールにしていました。プラごみのポイ捨てを削減するというものではありません。使い捨てプラスチックの消費自体は悪ではない行為である一方で、ゴミのポイ捨てはわかりやすい悪です。そのためポイ捨ての方が考えやすいしアイディアも映えるものが出てきやすいです。ただブリーフのゴールとは違うのでNGです。そんなアイディアが出てきたとしても、それは棄却しようと、また悩んだときに「そっちに逃げないようにしよう」と相方と確認し合いました。使い捨てプラスチックの使用・消費それ自体をどう「控えようかな」と感じさせるか、そのアイディアに集中しようとしました。

④認知までか?行動までか?

PR部門では行動変容まで起こすのが施策の基本とされていると思いますが、インテグレーテッドの場合は、メディア種類も広く色々な仕掛けができるので、必ずしも行動変容まで行く必要はないのでは、と考えました。行動変容まで行くとどうしても少し地味になり、パワーのない施策になるのではというイメージがあったからです。行動変容までの道筋を固く描き、真面目な内容になってしまうのは避けたかったです。ましてや今回のテーマは実際の事例が多く、過去事例を越えるためには「少し飛んだような」施策が求められていると感じていました。そのため今回は、「認知まででもいいからとにかく派手なもの」を意識しました。もちろん行動変容までいけるに越したことはなかったので、限定したわけではないです。行動変容まで描き切ることのプライオリティを下げただけでした。

⑤ネガティブにならないように

これは何をやらせても基本だと思います。ネガティブでショッキングなメッセージをかくと企画書もとてもインパクトのあるものができるのですが、それは簡単で、こと実施が求められていないヤング系コンペでは求められていないので。

 

上記5点を共有しつつ、まずは別々でアイディア出しをしました。

今回の企画アイディアは、この夜に思いつきました。

9/7(金):アイディア出し(共同)(6h)

前日の個人アイディアのすり合わせからはじめています。発散のフェーズで、とにかく数を出します。前日9/5のアイディアは個人的にはかなり勝ち筋に使いものと感じていましたが、それは相方と共有した上で一旦置いておいて、他のアイディアを考えます。

基本は無秩序で考えます。何かお互いにテーマ別で考えたり(「〇〇の視点で考えてみよう」など)、片方が言った内容を膨らせたり、など色々しますが、基本的にやり方は縛らないです。琴線に触れるならお互い自由に膨らませようと言った具合です。特に相方は絵からアイディアを出すタイプで、私は言葉からなので、正直面白いと思う琴線も合わなければ、アイディアの出し方もお互い全く理解できないです。笑

基本的にはブリーフの解釈に関しては話しますが、アイディアに関しては一緒にやっていても結局それぞれ黙々と考えているような状態になります。

ここでもう1案、なかなかのアイディアが生まれ、ストックが2案になりました。

9/7(金):アイディア出し(別々)(2h)

まだ発散です。この時点でストックアイディアは2案ありましたが、意識的にあまり形にしない状態のまま進めます。ビジュアルなど一度固めてしまうと、そのアイディアにハマってしまって他のアイディアが考えられなくなるからです。ギリギリまで発散します。

9/8(土):アイディア出し(別々)(15h)

まだまだ発散です。一方で時間もないので、ビジュアライズはしませんが、残っている案(この回では2案)の事例調査をします。すでに実施されていた場合には当然泣く泣く削除します。似ている過去事例が見つかってしまっても、何かと理由をつけてそのアイディアを生かそうとしますが、ここはシビアに見ます。過去事例を潜るように変に歪曲させてしまっても大方いいものにはならないので。ただこの段階で類似事例を見つけてしまうと心のダメージが大きいので、やはり過去事例は最初の段階で見ておくことが良いように思いますね。

9/9(日):アイディア出し(共同)(11h)

前半は発散でした。お互いのアイディア共有からまた発散させます。

後半は収束させます。結局前述の2案が残り、両案ともに簡単にストーリーとビジュアルイメージを起こして(スケッチレベルです)、どちらがいいかを判断します。

結果、最初に思いついた方を選択しました。決め手はメインビジュアルの絵映えです。インテグレーテッドは様々なメディアでの拡散が求められるので、アイコニックなビジュアルイメージが一つドンとあるのは重要なことだと話し合い、結果選定しました。

9/9(日):製作(3h)→提出

ここはもう集中!です。相方はビジュアルを、私は文言を書きます。文言は割と簡単(アイディア収束の段階ですでにある程度日本語ができているので、あとは翻訳のみ)なので、ささっと終了させ、使用画像選定のフォローに回ります。

本当は9/9の政策はもう少し早めに終わらせて、18:00ごろには提出できるようにと考えていたのですが、この回は2人ともこれだ!というアイディアになかなかたどり着けず、発散の時間が長くなってしまい、提出はギリギリになりました。個人的には2日目の時点でこれだ!となっていたため、相方へのプレゼンと説得にむしろ時間を使ったような変わった回でした。

一方で、結構アイディアにとらわれて、2日目以降のアイディアの数をあまり出すことができなかったのは反省です。

 

総括:

褒めてやってもいい点:

・認知で止まってもいいと判断できたこと。これは最初に部門過去作品をしっかり見て、それでも勝っている事例があることを確認できていたから。割としっかり部門研究ができていたと思います。

・最初にコンペ全体のイメージ整理と事例調査を行い、勝ち筋/負け筋の整理をしたこと。これによりアイディア出しの精度が上がりました。

・ビジュアルのインパクトにこだわったこと。これも過去事例からの推測になりましたが、結果的に間違いではありませんでした。

・最終残った2案から、本案を選定できたこと。今回落とした2案目はShortListの別のペアのアイディアに酷似していました。我々は製作の時間をあまり取っていなかった為、おそらく2案目の方を選定していたらクオリティで比較されて負けていただろうと思います。(ただ、2案とも結局良い勝負ができていた案だったというのは自信になりました。)

まだまだ改善が必要な点:

・最初のアイディアにハマって、その後のアイディエーションの数を出せなかったこと。結果オーライではあるものの、基本はすぐに切り替えるべきです。最初のアイディアが絵映えするものだったので、ビジュアルイメージが自分の中でしっかり固まってしまっていたのが問題だったかもしれません。ビジュアルが固まっても切り替えられるようなマインドを持ちたいですね。

・製作の時間が短すぎました。最終日は丸々製作でもいいくらい。アイディアが被らなかったから良いものの、被っていた場合はビジュアルと施策内容のクオリティで勝つしかない。今回は類似内容が出ていたらクオリティ的に負けていたと思います。

 

 

丁度来週の9/8から、2020年のインテグレーテッド部門のコンペが始まるようです。懐かしさを感じたので書いてみました。

他の挑戦記録も自身の振り返りのためにも今後書いていこうかと思います(シンガポールでの本戦も後日)。